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2007-08-27 21:13
連載投稿(1)NEAT第5回シンガポール総会に出席して
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
昨年の第4回年次総会を除いて、毎年NEAT年次総会に参加して、提出された作業部会の報告とその政策提言について、自分なりの意見を積極的に呈してきた。今回も、「東アジア金融協力」、「東アジア投資協力」、「東アジア移民労働協力枠組み」、「東アジア文化交流の増進」、「東アジアエネルギー安全保障協力」、「東アジア共同体構築の全体構造」の6つの作業部会の報告と政策提言が発表された。
これらの発表を聞いていての全般的印象は、作業部会の最終報告書作成に関与した各研究機関の熱心な努力にもかかわらず、(1)課題分析が「表面的」で、内容に深みが足りない、(2)政策提言が包括的で、余りにも「一般的」である、(3)政策提言が、既に発表されている政策提言と重複しているものが多く「新鮮味」が少ない、(4)提言されている政策に、その優先度・順位が不明確である、(5)提言されている政策の実施を監視(モニター)するためのNEATの制度的仕組みが不明である、最後に、(6)東アジア諸国政府への政策提言であっても、その実施においては、東アジア地域外の関係諸国、関係諸組織との協議が不可欠であるが、そこで予想される諸々の異見、障害についての議論の詰が足りない、というものであった。その結果、これらの政策提言が、受け取り側であるASEAN+3首脳会議やそのための上級事務会合にとってどれだけの有用性があるか、その効果があるか心配せざるを得ない。このような印象をもったのは、小生だけでないことも、今回の議論の過程で判明した。
以前も提案したことであるが、過去5年間の作業部会の報告書、政策提言、その作成過程をレビューして、将来に向かってその改善策を講ずること。この提案を、今回の第5回会合でも提案したが、多くの参加者の共感をえた。最終的には、上記のレビューによる本格的な改善策の提示に期待するが、さし当たっては、各作業部会の主催研究機関が上記の欠点に真正面から対処して、より望ましい原案を作成し、他の12カ国に提示し、提示されたこれらの12カ国の研究機関は、それぞれの立場で十分検討して、修正案を作成する。主催研究機関は、それら複数の修正案を十分検討して、2次案を作成し、他の12カ国に提示する。原案および2次案の修正には、時間的制限をつけることによって、NEAT総会へ提出する報告書が期限内に作成され、その内容、特に政策提言がNEAT研究機関の総意を代表し、アセアン+3首脳会議にとって一層有用かつ効果的なものにする。合意が困難な場合には、少数意見も付記するといったことが必要である。
今回の第5回年次総会での議論でも明瞭なように、各作業部会の主催研究機関は、その原案の作成においては、東アジア地域内外の国際機関、域外の専門家の協力を得て、主要課題の分析を深め、政策提言の重複を回避し、さらにその有用性、実現可能性、新鮮度と付加価値を高める必要がある。政策提言には、必ずその優先順位を明確にして、その提言されている政策の費用便益分析結果を明示し、また、提言されている政策の導入のための複数の制度的枠組みを提示して、その導入がもたらす費用対効果を明示すべきだ。(つづく)
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