新型コロナウイルスに感染した最初の患者が見つかったのは2019年12月1日であるとされる。その後、テドロスWHO(世界保健機関)事務局長が1月30日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を行い、3月11日に「パンデミックとみなせる」と宣言したときにはすでに手遅れであった。2019年12月上旬から2020年1月20日頃までの期間において新型コロナウイルスへの初動対応に重大な瑕疵があったことは明らかである。この期間を時系列に概観し、初動対応の瑕疵について考えてみたい。2019年12月上旬に武漢市の多くの病院に発熱など体調の異変で多数の患者が押しかけた。そのうち、金銀潭医院で最初の入院患者が発症したのは2019年12月1日であるとされる。このことは2020年1月24日に医学誌『ランセット(The Lancet)』に掲載された論文(“Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China.”)「中国の武漢市において2019年の新型コロナウイルスに感染した患者の臨床的特徴」で言及されている。同論文をまとめたのは同病院の黄朝林(ハン・チャオリン)医師を筆頭とする複数の医師である。同論文によると、1月2日までに同病院に入院した41人の患者が新型コロナウイルス(2019-nCoV)に感染していたと特定された。そのうち、27人がウイルスの発生源ではないかと目された武漢市の華南水産卸売市場との関連が疑われた。他方、その他の14名の患者は同市場には出入りしておらず、その感染経路については不明であった。また12月1日に出たとされる最初の患者も市場と関係がないとみられている。最初の患者の記載を含め『ランセット』掲載論文が事実関係に即して書かれたものであるか必ずしも明らかでない。最初の感染者が11月の段階ですでに出ていたとの推察もある。