ポンペオ国務長官は7月23日に「共産主義中国と自由世界の将来(“Communist China and the Free World’s Future”)」と題し、対中関与政策からの決別を宣言する演説をニクソン大統領図書館・博物館の前において行った。同演説は米中新冷戦の勃発を象徴する演説として歴史に刻まれることになるのではなかろうか。本稿はポンペオ氏の演説を解説すると共に、わが国を含め自由主義諸国が今直面している危機について論じてみたい。ポンペオは初めに中国に対し米国の指導者達が誤った考えを固持してきたと指摘した。ポンペオが言うところの誤った考えとは、米国が中国に関与を続ければ、中国もいずれ自由と民主主義を受容するであろうという仮説であり、そうした仮説を歴代の米政権がまことしやかに信じてきた。とりわけ民主党政権はそうした仮説を信じた節がある。最近ではこの考えの信奉者はオバマ政権であったと言えよう。親中派のオバマ大統領は2009年1月から2017年1月までの決定的に重大な時期の米大統領として中国共産党指導部、とりわけ習近平指導部による既存の国際秩序の現状を覆そうとする数々の行状を見逃し続け、また行状に目を背け続けた。(「米中新冷戦の起源(1)(2)」『百家争鳴』(2020年7月27、28日)参照。)