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2020-07-08 08:31
(連載2)金融経済だけが持ち直すという誤算
真田 幸光
大学教員
それでも真田は、弱者救済を念頭に活動の軸を置いてきました。ところが、上述したように「実体経済は混乱が続いている」一方で、「金融経済は見事に持ち直してきている」のであります。これは誤算でした。実体経済を大きく上回る資金が市場に供給されていると言う所謂「バブル経済」の状況下にあって、今回の新型コロナウイルス問題は、世界全体をすべからく痛めつけていることから、地域的にも金融商品的にも他の地域、他の商品に資金を移動してプール出来ないので、様子見をせざるを得ないという状態となりました。また、新型コロナウイルス問題は、治療薬さえ完成すれば、突然回復する可能性もあり、それが分かるまでは様子見することが取り敢えずは得策だという共通理解も出てきました。
逆に、この実体経済の混乱下で、自ら積極的に資金を引き上げると、資産価値を落とす引き金を引きかねず、金融経済が大混乱し、世界同時不況をもたらしかねません。そして行くところまで行ってしまえば、世界同時不況が戦争にまで発展する危険性もあるといった考えも広がり、それを踏まえた政策で金融経済が持ち直して、現在では、市場も比較的良い状態で安定しています。
その際たる市場が株式市場です。市場参加者は、上述したような政策対応を見て、「中小零細企業まで政府が救うのであれば、上場している大企業は基本的に潰れない。倒産しないのであるならば、株は紙切れにはならない、従って、株を持っていても一定の安心感はあり、平時のディールが出来る」と考え始め、指数は堅調に推移しました。
即ち、真田の誤算は、「まずは実体経済を支えよう」として出した考えが、「まずは金融経済を支えている」と言う状況を生み出していることであります。今、私たちが先ずは守るべきは、「実体経済」であり、このままの状態が続けば、「格差の拡大まで引き起こす」とまで考えられます。そして、米国のFRBも、こうした点を背景とした格差拡大を指摘し始めています。金融経済だけが先行してしまえば、別の要素からの社会不安が生じかねません。政府の「義のある政治」が望まれるところであります。(おわり)
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