その後、2020年2月6日に衝撃的な内容の研究報告が学術誌の「リサーチ・ゲート(Research Gate)」に発表された。研究報告は広東省の華南理工大学の肖波涛(シャオ・ボタオ)教授らがまとめた「新型コロナウイルスの可能な発生源(“the possible origins of 2019-nCoV coronavirus”)」」であった。問題の海鮮市場でキクガシラコウモリが売買されていないことに注目した肖波涛教授は他の可能性を探った。肖波涛が疑ったのはウイルス関連研究所からウイルスが漏れた可能性であった。同教授は武漢市にある「武漢市疾病予防管理センター(the Wuhan Center for Disease Control Prevention (WHCDC))」と「中国科学院武漢病毒研究所(Wuhan Institute of Virology, Chinese Academy of Sciences)」に目を付けた。特に「武漢市疾病予防管理センター」は海鮮市場からわずか280メートルという至近距離に位置する。しかも、同センターは近年、コウモリを湖北省から155匹、浙江省から450匹を捕獲したとされる。捕獲されたコウモリの中にはSARSを引き起こしたウイルスを持つとされるキクガシラコウモリも含まれていた。同センターの研究員はコウモリの血液や尿が皮膚に付着したという経験があった。感染のリスクを恐れた研究員は自主的に隔離措置を講じたとされる。また新型コロナウイルスに感染した患者が駆け込んだ「ユニオン病院(the Union Hospital)」は「武漢市疾病予防管理センター」と近接していた。同病院の多数の医師達もまもなく同ウイルスに感染したとみられる。こうしたことから、同ウイルスが何らかの事由で上記のセンターから外部に流出し、人に感染した可能性があると肖波涛は推論したのである。