しかし、ESAの平和利用は、日本の平和利用と解釈が異なる。1969年の決議では、日本の平和利用は、防衛省や自衛隊の予算を使うことも、宇宙技術を開発することも、宇宙機器を保有することも、宇宙政策に口を出すことも認められなかった。すなわち「非軍事」という解釈であった。他方、ESAでは、加盟各国の安全保障政策が異なっていることもあり、軍事目的の技術開発は行わなかったが、加盟国の軍がESAで開発した衛星通信や地球観測の技術を応用することを止めることはなかった。しかも、冷戦後には、安全保障の概念が変化したとして、ESAが積極的に安全保障問題に関与し、GMES(Global Monitoring for Environment and Security)、すなわち環境と安全保障のグローバル監視というプログラムを実施し、各国の軍隊と協力して衛星開発や衛星データを平和維持活動や海賊対処活動などへの利用できるような体制を整えている(この点に関しては2012年7月8日の毎日新聞の『論点』で議論したのでそちらもご参照ください)。