バンク・オブ・アメリカが、来年から小口の顧客に対して毎月5ドルのデビット・カード手数料(決済口座維持手数料)の徴求を開始すると宣言し、これに対する反対の署名運動を、米大学院の女学生モリー・カッチポールが9月末からインターネット上で始めた。大銀行は、リーマン危機以降、公的資金(税金)の注入を受けたのに、顧客から手数料を徴求するのはけしからんという主張である。これはワシントンD.C.から始まった動きであるが、33日間で30万人の署名を集め、11月1日、バンク・オブ・アメリカは、遂に、手数料の徴求を取り下げた。すなわち、「草の根革命」が成功したわけであり、大きな意義を持つ。これも、反ウォール街運動と同じ志向をもつ運動にほかならない。また、大銀行から信用組合(credit union)に銀行口座を移そうという2010年1月に誕生したインターネットによる運動 “Move Your Money Project” も、かなりの広がりを見せている。
この運動のウェブサイトは、アメリカの大恐慌時代を舞台に、当時の大銀行と戦った地方の中小住宅金融機関の経営者を主人公(主演=ジェイムズ・ステュアート)にしたヒューマニスティックな名作映画『素晴らしき哉、人生!』(1946年制作、製作・監督=フランク・キャプラ)を前面に出している。すなわち、資金を極力ウォール・ストリートからメイン・ストリートに移そうという運動である。また、ロス・アンジェルスの女性画廊オーナーのクリステン・クリスチャンが始めた消費者運動 “Bank Transfer Day” も、インターネットで、銀行口座を大銀行から地元の信用組合に移転させようという動きであり、一定の支持を得ている。