米国の経常収支は、1977年以来、一貫して赤字であるが、それには国内格差が過大であることが一つの大きな背景としてある。過大な格差をそのままにしておくと、暴動発生のリスクが高まるため、政府としては、高成長を目指すことになる。かつて、中南米諸国は、「高成長志向 → 輸入拡大 → 国際収支悪化 → 対外債務支払い困難」という悪循環に陥っていた。しかし、これらの諸国の多くは、その後、中道左派政権下で格差縮小に向けた政策をとったことにより、そうした悪循環から抜け出した。現在、米国は、かつて中南米諸国が長年苦しんだ悪循環に陥っている。筆者は、もう10年以上前から、「アメリカ合衆国の中南米化」(\"Latin Americanization of the United States\")と呼んで警鐘を鳴らしてきた。米国の場合は、自国通貨のドルで借り入れるために、対外債務支払い困難には陥っていないが、その代わりにドルの対外価値が大きく下落し、世界経済に甚大な悪影響を及ぼす。(つづく)