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2009-10-22 20:59
(連載)羽田国際ハブ空港化問題について(1)
関山 健
東京財団研究員
10月12日、前原誠司国土交通相は、羽田空港の国際化を進め、航空網の拠点となる「ハブ空港」にする方針を表明した。羽田空港の国際線は、現在アジアとのチャーター便に限られているが、来年10月の第4滑走路供用開始を契機に、昼間はアジア、深夜・早朝は欧米にそれぞれ定期便を飛ばす計画となっている。前原大臣の発言は、こうした「羽田空港の国際化」をさらに推し進める意向を示したものだ。ただし、この前原構想の具体策は不明であり、その後の混乱した議論の解決も見えない。この点、筆者は、今月上旬に刊行した轟木一博氏との共著『航空機は誰が飛ばしているのか』(日本経済新聞出版社)のなかで、この羽田空港国際化問題について、空港運用の技術的な制約や日本の成長戦略などの視点から検討を行った。
本稿は、そこでの検討を踏まえ、羽田空港国際化問題について、「成田空港に就航しているアジア便の一部を羽田空港に移転させ、『日本の玄関・成田、アジアへの窓口・羽田』という新たな棲み分けの下で、首都圏空港全体の効率を向上させることを目指していくべき」との提言を行うものである。「羽田空港の国際化」すなわち国際便の増加を望む声は多く、自民党時代の経済財政諮問会議や規制改革会議などでも国際線増加の必要性が議論されてきた。彼らに言わせれば、更なる国際便の増加が望まれるところであろう。
他方、地方の知事会等からは、地方路線に優先的に配分するよう要望書も出されるなど、国内基幹空港としての羽田空港の役割を期待する声も大きい。各地方空港から羽田空港との直行便の就航の要望は大きく、既に就航しているところでも多頻度化の要望が多数寄せられている。日本の国内航空ネットワークは羽田空港が支えている状況であり、その発着枠を単純に国際線に切り替えてしまえば、多くの地方空港の経営が成り立たなくなる。こうした状況に対して、願わくば羽田空港の発着枠をどんどん増やして、国際便も国内便も増加させられればよいのであるが、現実はそれほど甘くはない。詳細な説明は、前出の拙著をお読みいただくとして、結論から述べれば、羽田の発着枠をさらに増加させることは空港運用の現実からして難しい。
すなわち、羽田空港の発着枠は限られたリソースであり、したがって「羽田空港の国際化」とは、日本の政治経済の中心地たる東京への近接アクセスという優良なリソースを、国内線と国際線との間で分けあわねばならないゼロサム・ゲームなのである。したがって、「羽田空港の国際化」は、日本の航空インフラ全体を視野に入れて、羽田空港と成田空港との役割分担の見直し、関西国際空港や中部国際空港という他の国際空港の積極活用、全国の地方空港の開放などと一緒に考えなくてはならない問題なのである。羽田空港をどう活用するかは、単に東京近郊に住む住民や出張者に影響する問題ではない。(つづく)
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