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2009-02-03 10:02
(連載)「機会の窓」は開いているか:首相のサハリン訪問(2)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
では、メドベージェフには北方領土問題で何か本質的に新たなことを提案する可能性があるだろうか。また、首相としてどう対応すべきだろうか。リマのAPECサミットの日露首脳会談(昨年11月22日)の場で、メドベージェフ大統領は「この問題の解決を次世代(потомки:子孫、後継者とも読める)に委ねることは考えていない。どこの国でも官僚の抵抗は存在するものであるが、より重要なのは首脳の立場であり、首脳の善意と政治的意思があれば解決できる、並々ならぬ考えが必要であるが、そのような考えは、既存の文書から引き出さなければならない」と述べた(外務省)という。
さらに、12月9日、来日したナルィシキン大統領府長官も、平和条約問題に関して「双方が極端な立場から離れ、受け入れ可能な解決策を探ることが重要だ」と述べた。また、「大統領が事務方に、紋切り型でない解決を模索するよう指示を出した」とも伝えた。
プーチン前大統領が日ソ共同宣言のロシア流解釈をベースにしたものではあるが、領土問題の解決に意欲を示したのは事実だ。ただ、首脳の言葉と現実のロシア政府の政策は一致しなかった。というより、実際にはプーチン時代のロシアの平和条約問題に対する姿勢は、以前より強硬になった。ではメドベージェフ大統領の場合、プーチンのアプローチを超える可能性があるか。また、今の彼にそれだけの力量があるだろうか。後述のように、プーチンよりさらに先に出ることは、実際にはプーチン批判の意味を持つ。また、領土問題はナショナリズムを刺激する危険な問題で、大統領として相当の力量がないと、例えば国後、択捉の本格交渉といった新たなアプローチはできない。
ロシア側が「両極端を排す」という場合、ゼロ返還と4島返還を指していることは、ほぼ間違いないだろう。そこで、最大限譲歩したものとしてロシア側から出てくると想定される案は、プーチンの顔を立てるためにも、日ソ共同宣言を基礎にしたバリエーションであろう。たとえば、「平和条約締結後の歯舞、色丹の2島返還プラス国後、択捉の共同開発」という案だ。現在、ロシア側にも日本側にもこのような考えは存在する。しかし、実際にはこれは日本にとって「2島マイナスα」となり、これを日本側が受け入れることはあり得ない。また国後、択捉の共同主権という考えも非現実的である。平和条約締結後の国後、択捉の継続協議もあり得ない。日ソ共同宣言を基礎にする限り、他に現実的な案は思い浮かばない。(つづく)
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