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2026-05-07 17:48

(連載2)高市首相「パワーアジア」は対米外交の一環なのか

篠田 英朗 東京外国語大学大学院教授
 「パワーアジア」は、なぜか「POWERR ASIA」と意図的にスペルを「power」から変更している。「Partnership on Wide Energy and Resources Resilience Asia(アジア・エネルギー・資源供給力強靭化パートナーシップ)」を略したということのようだ。これには何となく落ち着かないものを感じる。アメリカがUSAIDで類似した名称のプログラムを実施したりしていたからだ。
 
 今回の「パワーアジア」は、日本は保険や融資を提供する仕組みで、無償支援ではない。そもそも東南アジア諸国は、もはや無償支援を必要とするようなレベルにはないので、それは当然である。だが、それにしても有限の資源を活用して支援をするわけだから、日本にとっても有益な結果が期待されなければならない。今回については、それは医療関連物資の調達に役立つ、ということが正当化理由になるらしい。しかしそれにしては1.5兆円の額は大きいのではないか。結局は、東南アジア諸国のエネルギー調達に影響を与えたい、ということだろう。端的に言えば、中東危機に対応した新たな原油調達先を、アメリカに振り向けたい、ということだろう。

 日本(高市政権)は、中東危機に際して、イランに厳しい態度をとり、米国重視の外交姿勢を鮮明にしている。その一方で、イランと良好な関係を持つロシアと中国に対して、敵対的と言わざるを得ない外交姿勢を取っている。ロシアに対する経済制裁を続けており、中国とも高市首相の台湾有事発言に起因する一連の対立がレアアースの問題にまで波及しながら続いている。「パワーアジア」を通じた東南アジア諸国に対するアメリカからの原油買い付けの斡旋は、どうしてもその文脈で解釈せざるをえない構図を内包している。

 アメリカの利益になることを、日本が協力することそれ自体が、悪いということはないだろう。もっとも日本にどこまでそのようなことをする余裕があるのか、という素朴な疑問がわかないわけではない。ただ、東南アジア諸国は、中東危機に対して、日本ほどには、アメリカに好意的な視線を送っているわけではない。マレーシアやインドネシアなどのイスラム教国は特に厳しい視線をアメリカに送っている。露骨に親米誘導・反中包囲網形成の意図を感じさせるのは、必ずしも得策ではない面がある。「パワーアジア」の今後の展開には、そうした配慮から、注意を払っていかざるをえない印象がある。(おわり)
 
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(連載1)高市首相「パワーアジア」は対米外交の一環なのか 篠田 英朗 2026-05-06 17:41
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