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2026-05-06 17:41
(連載1)高市首相「パワーアジア」は対米外交の一環なのか
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
高市首相がベトナムとオーストラリアに外遊をした。これらのうち、ベトナムは「竹外交」で知られる全方位外交路線を掲げつつ、目を見張る経済成長でASEANの有力国に発展した沿岸国だ(ベトナムは、ASEAN域内でインドネシア、シンガポール、タイに次ぐ第4位のGDPを誇り、原加盟国ではフィリピンとマレーシアを凌駕する規模に急成長している)。
ベトナムは、高市首相の就任後の外遊先の中では、最も攻めの姿勢が必要になる訪問先だったと言える。なお日本はこれまでベトナムに対して沿岸警備支援などを提供し、南シナ海での海洋安全保障を強く意識した関与をしてきている。ただし対岸の島嶼国フィリピンと比して、ベトナムは中国やロシアとも良好な関係を保っていることで知られる。ベトナムにとっては、中国との貿易関係が圧倒的なシェアを占める。日本は韓国と比しても後れを取っている。
高市首相は、ベトナムでは共同声明を出さなかった。オーストラリアでは共同声明を出している。この点を誇大に強調しすぎるつもりはないが、いずれにせよ日本とベトナムの関係は、必ずしも特別だとまでは言えないということだ。高市首相は、共同声明の代わりにベトナム国家大学ハノイ校で講演を行った。ちなみに日本語で講演を行ったのは、発展著しいベトナムのエリート校での講演としては、いささか物足りない感じはする。ベトナム訪問にあたって高市首相が強調したのは、「パワーアジア(POWERR ASIA)」と銘打った「総額約100億ドル(約1・5兆円)のエネルギー調達を巡る金融支援枠組み」だ。中東に起因するエネルギー危機に対応するベトナムを含めた東南アジア諸国を、日本政府が出資する日本貿易保険(NEXI)の輸出保険や国際協力銀行(JBIC)の融資を活用して支援して、原油を調達するという。これによって日本側には、東南アジアで生産されている医療関連など物資の日本への安定供給が図られるのだという。
悪い話ではないように聞こえる反面、日本でもエネルギー危機が迫っている中で、他国を支援している余裕があるのか、という疑問もわく。政治的含意が気になるところだ。ベトナムは、中東の危機を、ロシアからの原油調達で乗り切ろうとしている。「パワーアジア」は、この流れを意識しているようだ。なぜなら日本からの融資で、ベトナムなどの東南アジア諸国に、アメリカから原油を購入するように働きかけるつもりのようだからだ。(つづく)
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