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2025-01-29 19:10
(連載2)医療保険制度が蝕まれる理由
倉西 雅子
政治学者
おそらく、かくも加入に寛容であるのは、公的医療制度には、国民間の相互扶助の精神、並びに、国民が生涯に亘って日本国内に居住するものとする‘国民モデル’があるからなのでしょう。確かに、これらの前提に基づけば、同制度は国民にとりましては医療費負担のリスクを軽減する助け合いの制度です。しかしながら、日本国政府の移民受け入れ政策への転換もあって、外国人人口が増加する今日、同制度は、低コストで質の高い治療を受けたい外国人の目には、好都合な制度に映ることは理解に難くありません(なお、2020年から、外国に居住する被扶養者については適用から外している・・・)。僅かな加入期間でも、深刻な持病があったとしても、そして、高齢であったとしても、高額の医療費を賄ってもられるからです。実際に、日本国の公的医療保険制度に‘フリー・ライド’するために、日本国に移住する中国人も少なくありません(違法行為はないものの、‘確信犯’という意味では倫理において問題がある・・)。
外国人による医療保険制度の利用がたとえ合法的な行為であったとしても、日本国民から見ますと、これは著しく不公平です。そして、その原因が上述したような制度上の欠陥にあるとしますと、同問題を解決するためには、現行の制度を変える必要がありましょう。例えば、医療保険についても、少なくとも受給条件については長期滞在を加えるべきです。この点、国庫負担のある国民年金の受給資格要件の期間は10年以上ですので、医療保険についても、受給に関しては同程度の要件を付すべきかもしれません(もしくは、加入に際して10年以上の滞在を予定している場合のみこれを認める・・・)。
もっとも、この措置ですと無保険状態があり得るのですが、外国人に対する健康保険制度は別途設け、比較的高額となる保険料を設定する、あるいは、民間保険への加入を義務付けるといった方法もありましょう。また、外国人の高齢者については、本人であれ、被扶養者であれ、本国における加入期間があるはずですので、原則として、本国での制度利用を原則とするなど、様々な工夫があり得ましょう。
さらには、国家間の公平性を確保するためには、相手国との協定の締結、あるいは、国際的なルール作りも必要となりましょう(今日、二重加入を防止するための二国間の社会保障協定が締結されているものの、中国との間の協定の対象は公的年金のみ・・・)。日本国民の社会保険料の負担が年々重くなり、家計を圧迫している今日、医療保険制度の特徴に鑑みて、日本国政府は、その改革を急ぐべきではないでしょうか。そして、この問題は、国境を越えた人の自由移動が時にして侵害性を有するという、グローバリズムの実態をも暴いているように思うのです。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)医療保険制度が蝕まれる理由
倉西 雅子 2025-01-28 18:56
(連載2)医療保険制度が蝕まれる理由
倉西 雅子 2025-01-29 19:10
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