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2025-01-28 18:56
(連載1)医療保険制度が蝕まれる理由
倉西 雅子
政治学者
近年、日本国内に住所をもつ中国人の人口が増加するにつれ、国民が深く懸念する事態が生じています。マスメディア等でも取り上げられてきたのですが、それは、医療保険の利用を目的とした中国人の日本国への移住です。この問題は、2012年に、原則として3ヶ月以上に日本国に滞在する予定の外国人に対して、日本国の社会保険への加入を義務付けたことから始まります。義務づけという言葉に惑わされがちですが、同改正は、住民基本台帳に登録されている外国籍の人であれば、日本国の各種社会保険制度に加入し、これを利用することができることを意味します。
このような問題が生じるのですから、現行の医療保険制度には、何か盲点があるはずです。先ずもって、日本国政府は、公的年金制度と医療保険制度の両者を基本的に社会保険として一括りに扱っているようです。「106万円の壁問題」で知られるように、年金と健康保険の加入要件はほぼ同一です。しかしながら、一方は老齢年金、もう一方は医療保険ですので、その目的もリスク・カバーの仕組みも著しく違っています。民間の金融機関では両者は明確に区別されており、本来、別物として考えるべき制度のように思えます。
特に公的医療保険制度が狙われ、外国人によって‘フリー・ライドされてしまう理由としては、同制度は、公的年金制度よりも受益と負担のバランスが崩れやすい点を挙げることができましょう。年金制度の場合には、基本的には加入者本人が保険料を積立て、それに見合った年金が給付されます。納付期間や納付額が給付額に比例的に反映されるため、比例平等の原則を一先ずは保たれています。日本国の厚生年金に至っては、加入期間が僅か1ヶ月であっても、受給資格を満たす年齢に達しますと、その納付額は厚生年金分として支給されます(国民年金は、後述するように受給資格を得るには10年以上の加入が必要)。
一方、医療保険制度は、必ずしも受益と負担が均衡するわけではありません。当然と言えば当然のことなのですが、医療費の負担が軽減されるのは、治療の必要な病気や怪我をした人のみです。このため、軽い風邪で受診した人と高額の先端医療を要した人とでは、同制度の受益の部分にあって雲泥の差が生じます。同制度では、加入者にあって受益格差が著しいのです。しかも、公的医療保険となりますと、上述したように外国人であっても日本国内に住所があれば、誰でも加入することができます。民間の保険会社ですと、病歴や年齢等が厳しくチェックされ、リスク面からの厳格な審査を通らなければ加入契約を結ぶことが出来ません(一定年齢以上の高齢者は加入対象から外されてしまう・・・)。将来の支給額が実際の納付額よりも上回ると判断される保険契約は徹底的に回避されるのです(精緻な確率計算が行なわれている・・・)。ところが、公的医療制度では、こうした病歴や健康状態のチェックはありませんし、高齢者でも加入できます。民間保険会社とは真逆なのです。(つづく)
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(連載1)医療保険制度が蝕まれる理由
倉西 雅子 2025-01-28 18:56
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倉西 雅子 2025-01-29 19:10
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