こうしたこともあり、同市場が感染拡大に重要な関りを持つとしても、市場が発生源であると特定できなかった。実際に今回の現地調査のWHO調査団長を務めたエンバレク(Peter Ben Embarek)氏は2020年5月8日の時点で、同市場が感染拡大に関連し重要であるが市場が発生源であるかどうか不明であると発言していた。この間、新型コロナウイルスの発生源としてにわかに疑惑視されたのは武漢市にある二つのウイルス関連研究所であった。一つは同市場に近接した「武漢市疾病予防管理センター」である。もう一つは、武漢市郊外に位置する「中国科学院武漢ウイルス研究所」であった。いずれもSARSコロナウイルスの研究を行っており、多数のコウモリを保有していた。武漢市がウイルスの発生源であり、その武漢市にSARSコロナウイルス研究を行っている研究所が二つもあり、しかもいずれの研究所もキクガシラコウモリを保有していたことから、これらの二つのウイルス研究所が新型コロナウイルスの発生源として疑われるのは自然の流れであったと言える。