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2020-12-29 05:09
(連載2)米大統領選‐運命の1月6日に向けた闘い
斎藤 直樹
山梨県立大学名誉教授
1月6日の両院議会で12月14日に確定したバイデン氏を次期大統領とする選挙人認定証に対し下院議員が異議申立てを行うことができる。下院議員による異議申立てはこれまで幾度も行われてきた。2000年大統領選挙、2004年選挙、2017年選挙においても下院議員による異議申立てがあった。とは言え、州政府が確定した選挙人認定証を棄却するためにはこれだけでは不十分であり、下院議員の異議申立てに呼応して一人以上の上院議員が異議を申し立てる必要がある。これまで上院議員が異議を申し立てた事例はなかったとされる。1月6日の両院議会でブルックス(Mo Brooks)下院議員が異議を申し立てることを明らかにしている。ブルックス氏は「私には選択肢がある。座して降伏し降伏の党員集会に加わるか、あるいは我々の国のために戦うことができる」と明言した。(“Mo Brooks: ‘Trump Won the Electoral College’ — I Can Be a Part of the ‘Surrender Caucus’ or I Can Fight for Our Country,” Breitbart, (December 15, 2020.))
問題はこれに呼応して異議を申し立てる上院議員がはたしているかである。ここにきて、タベルヴィル(Tommy Tuberville)次期上院議員が異議を申し立てる意思があることを明らかにした。(“Exclusive: Tuberville doing ‘due diligence’ before making decision on congressional challenge to Electoral College votes,” Yellowhammer News, (December 15, 2020.) )もしタベルヴィル氏が実際に異議を申し立てる事態となれば、状況は一気に流動化しかねないことが予想される。1月6日に下院に続き上院から議員による異議申立てが行われる場合、次期大統領選出の手続きは一旦中断される。その際、下院と上院に分かれて審議が行われるとされるが、これだけ大規模かつ深刻な選挙不正が行われたことを踏まえると、審議は難航することが予想される。もし審議を通じ結論が出ないようでは最終的に両院での票決にふされる運びとなろう。その場合、下院では各州1名の代表による投票が行われる。下院での議員数は民主党議員が共和党議員よりも多数を占めるが、各州1名しか投票できないということわりがある。これに従えば、共和党が30名、民主党が20名となり、共和党議員が過半数を超える。これに対し、上院ではかろうじて共和党議員が過半数に届いている状況である。(1月5日にジョージアで2名の上院議員選出の選挙が実施される。)従って、票決にふされる場合、どのような結果になるか明らかでない。バイデン氏を次期大統領とした選挙人認定証が棄却される可能性がないわけではないであろうが、実際には低いとみられている。この結果、バイデン氏が次期大統領に就任する可能性が高いことになろう。
これに対し、ミラー氏が言うとおり、上述の激戦州の各共和党が独自に確定した選挙人認定証がペンス氏の手元に届けられているとしても、あくまで非公式のものである。そのため、1月6日の上下両院議会がそうした認定証を取り扱う可能性は考えにくい。その場合、非公式の選挙人認定証を裁判所に付託することがないわけではない。しかしかりに最高裁に付託されることがあっても最高裁が非公式の認定証を取り上げる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。12月上旬にテキサス州と同州に同調する少なからずの州が激戦州のペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン、ジョージアなど4州を選挙ルール違反や選挙不正などを根拠に最高裁に訴えたが、12月11日に最高裁は「原告適格」がないとの一言で棄却したことは周知のとおりである。しかも公式の手続きにしたがったものでない選挙人認定証を最高裁が取り上げるという可能性は限りなく低いように思われる。しかも次期大統領を決するような重大な判断を行うことは最高裁の判事達としてもできる限り避けたいであろう。12月11日に続き、またしても判事達は逃げてしまう可能性が高い。
その間、激戦州の州議会が緊急招集され、州下院議員による票決を通じ選挙人が任命される可能性が残されているとは言え、この可能性も不透明である。州下院議員による選挙人任命を念頭に、トランプ氏がケンプ・ジョージア州知事に対し州議会を緊急招集するよう幾度となく求めてきたが、共和党員のケンプはこれに断固応じようとしない。ジョージア州議会が緊急招集されれば、州下院議員がトランプ氏に選挙人を投票する可能性が高いだけに、ケンプが執拗にトランプの求めを拒否していることにジョージアでは猛烈な批判がケンプに集まっている。他の激戦州の州議会においても州議会が独自に選挙人の任命に動くという見通しはなかなか開けていない。その結果、次期大統領就任日の1月20日が迫る中で、未曾有の選挙不正に対し怒りと憤りが収まらないトランプ大統領が選挙戦での敗北をはたして認めるであろうか。トランプ氏が今回は一旦退き、2024年大統領選挙への出馬に切り替えることができるだろうか。7400万以上の得票を獲得したと自負するトランプ氏がどのような最終判断を行うのか重大な関心を持って見守る必要があろう。(おわり)
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斎藤 直樹 2020-12-28 05:05
(連載2)米大統領選‐運命の1月6日に向けた闘い
斎藤 直樹 2020-12-29 05:09
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