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2020-02-29 13:58
(連載2)ドイツ政局の報じ方にみるマスコミの残念な報道力
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
つまり、国内メディアは「政局は報道できる」と東奔西走しながらも、永田町周辺の「登場人物の好き嫌い」レベルの話と「スキャンダル」以外は十分な水準の報道ができていないのだ。欧英間の交渉で主要な争点となった、移民、通商、主権など多岐にわたるテーマで先進国同士が陰に陽に駆け引きする状況を取材・分析できないで、まともな報道ができるのか。
本来今回のケースでは、EUの実質的盟主であるドイツやフランスの思惑こそ報道しなければならないし、イギリスを報道するにしても「ブレグジットの後、シェンゲン協定でEUの他の国からきたイギリス在住者はどうなったのか」というような取材がなければならないが、残念ながらそのような背景的取材は寡聞にして知らない。
こういうマスコミの姿勢がもたらす弊害として好例なのが、ドイツの「メルケルの後継者が辞任」の報だろう。ブレグジットに関して背後関係がわからない報道が続いてきた中で、いきなりこの事態を知って一体どれだけの日本人が唐突感を覚えずに報道に接しただろうか。逆に、背後関係をしっかりと調べれば、メディアが今まで報じていた「イギリスがEUから抜けて衰退する」という見立てだけではなく「ドイツやフランスの方が悪影響を受ける」という帰結にもなり得るはずだ。しかし、それでは今まで報道をしていた内容の全否定となってしまう。これこそ現在の日本のマスコミの有り様なのである。
ちなみに、ドイツでは、キリスト教民主同盟(CDU)のクランプカレンバウアー党首が次期首相候補最有力とされていたが、党内の抵抗もあり正式決定はされていなかった。同党首はベルリンで記者会見し「首相と党首の分離は党を弱める」と指摘。今年末の党大会で首相候補兼新党首を決めた後に辞任すると述べた。これは「メルケル路線がドイツ国内で否定された」ということを端的に意味しており、それもメルケルの推し進めた「EU至上主義」が否定されたということだ。そのことをしっかりと報道できない日本のメディアの情報で日本人は果たして正確なヨーロッパを見ることはできるのであろうか。(おわり)
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(連載1)ドイツ政局の報じ方にみるマスコミの残念な報道力
宇田川 敬介 2020-02-28 19:23
(連載2)ドイツ政局の報じ方にみるマスコミの残念な報道力
宇田川 敬介 2020-02-29 13:58
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