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2019-03-12 07:52
(連載2)BREXITをめぐる議論からの教訓
鈴木 馨祐
衆議院議員(自由民主党)
Brexitに関していえば、もともとはヒトの流入への抵抗感が惹起した問題です。カネやモノについてはイギリスがEUから離脱する理由にはなっていなかったはずです。本来であれば、ヒト・モノ・カネはそれぞれ別の論理で論じられなければなりません。それがセットになっていたがゆえに、最も人々の抵抗が強かったヒトのパートに引っ張られて国民投票の結果、イギリスはEUから離脱するということとなったわけです。特に大陸でない島国のイギリスにおいては、英連邦からの移民が多い国とはいえ、EUの一部として管理できないレベルの移民問題に直面することは、感情的にかなりハードルが高い問題であっただろうことは想像に難くありません。
加えてEUの求心力がその意味では非常に脆く、論理的には、国家をなくして統合するのか、EUをなくして国家の非常に緩い連合にするのかのどちらかしかない状況の中で非常に中途半端な立ち位置にいること、つまり無理やりにでもヒト・モノ・カネにまつわるものをセットにせねば、離脱が続いてEUが崩壊する可能性が高いというEUサイドの実情も、今回の混乱を助長したところでもあったと思います。
一方のカネの分野に関していえば、グローバルに動いている国際金融の世界にあって、為替であったり、様々なイノベーションの基盤や金融インフラにおいて、ロンドンの強さというものは際立っています。カネの面では逆にイギリスはEUを見ていないといってもいい状況です。グローバルに見ても特に為替の世界ではロンドンの存在感は飛びぬけていますし、通貨間の取引ということで言っても、ユーロポンドの取引高はドルポンドと比べて明らかに少ない。ところがモノの世界に関しては、物理的な距離に制約を受けますから、サプライチェーンも含め、イギリス経済は大陸ヨーロッパとかなりの相互依存にあり、市場や供給力の大きさから言っても大陸の方が強い立場にいることもまた明らかです。
どの視点で今後の国家経営をしていくのか。EUの中にありながら、通貨と金融政策の自由を維持し、シェンゲン協定の枠外でもあったイギリスのこれまでの立場は、この矛盾に一番フィットした最も有利なもので、移民問題等のヒトのファクターに感情的に引っ張られた結果、国民投票でそれを捨てる選択をしたことは非常に愚かな選択であったということは言うまでもありません。しかし、これまでの特権的な立場を放棄し、結果的にはゼロベースでこのスピード感の異なる三つのファクターの最適解をどう考えるのか、イギリスが現在直面している長期戦略の選択は日本やほかの国々にも示唆を与えてくれるものです。 BREXITについては、日本経済・世界経済への影響を最小限に抑えるための努力を全力ですることは当局としてもちろんですが、このような視点からも注目していきたいと思います。(おわり)
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(連載1)BREXITをめぐる議論からの教訓
鈴木 馨祐 2019-03-11 14:58
(連載2)BREXITをめぐる議論からの教訓
鈴木 馨祐 2019-03-12 07:52
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