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2017-06-18 09:19
(連載2)トランプではなく膨張中国に翻弄されるG7首脳
田村 秀男
ジャーナリスト
米国は曲がりなりにも成長を続けているが、白人中間層を支えてきた製造業は没落し、格差問題が深刻化している。日本はゼロ%前後の成長トレンドとデフレ圧力から抜け出せず、内需が低迷している。EUは市場の萎縮の中で高失業率と移民増に苦しみ、分裂の危機が去らない。中国に次ぐ新興国市場、インドの成長速度は中国に比べると遅い。米欧のリーダーたちは幻想だと批判されようとも、見かけの規模が巨大な中国市場に望みを託すしかない。
米国の場合、ゼネラル・モータース(GM)は中国市場を収益源とし、IT(情報技術)最大手のアップルのアップルストアは中国市場での売り上げが米本土を上回る。実利志向のトランプ政権は中国との不毛な貿易戦争を避け、懐柔に前のめりになるはずだ。中国はそれを心得て、5月上旬に対米輸入増をめざす「100日計画」を提示し、ウィルバー・ロス米商務長官をして「米中の貿易関係の歴史上かつてなかった超人的な偉業」とたたえさせた。
相手が一歩でも下がると、二歩前に出てくる、平たく言えば増長するのが、毛沢東時代以来の中国共産党の対外政策である。北朝鮮問題でも、習氏はトランプ氏の協力要請に「イエス」と言い、3月からは中国の対北輸入額の約5割を占める北朝鮮産石炭の受け入れを停止した。一方では鉄鉱石などの輸入は急増させている。中国からの対北石油供給や中国の銀行による外貨融通も従来通りだ。金正恩氏が高笑いしてミサイル実験を続けられるはずである。
結束にヒビが入ったG7サミットの前、5月中旬には習氏執心の経済圏構想「一帯一路」の国際会議が北京で開かれた。ビジネス機会に目がくらんだ欧州、さらにトランプ政権も代表団を派遣したが、中国側が提案した貿易に関する文章からは透明性や入札契約の基準を保障する項目が削除されていた。習政権はユーラシア大陸をカバーするこの経済圏に中国式ルールを浸透させようと野心むき出しだ。G7は膨張中国にすり寄るのをやめ、対抗することで再結束を図るしかないはずだ。(おわり)
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(連載1)トランプではなく膨張中国に翻弄されるG7首脳
田村 秀男 2017-06-17 13:27
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田村 秀男 2017-06-18 09:19
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