第三の理由は、アメリカにとって米中の利益の同盟が日米の理念の同盟よりもアメリカの国益にかなっていることにある。アメリカが日米関係で最も恐れるのは、尖閣問題で日中軍事衝突に巻き込まれることである。防空識別圏の設定は明らかに中国の挑発であり、軍事衝突に向けて中国がpoint of no returnを超えたことを意味する。アメリカとしては、日中間の領土紛争に巻き込まれるのはなんとしても避けたい。日中対立の文脈をめぐって日本が日米同盟を強化しようとするのは、かえってアメリカの国益に沿わないとの判断が出てくる可能性がある。相手への思いが強まれば強まるほど、思う相手は離れていく。日米同盟強化の思いが日米同盟弱体化、さらには解消を招く恐れがある。
軍事的な理由に加えて、米国の経済的利益から見れば米中関係のほうがはるかに重要である。成長著しい中国の市場はアメリカの経済発展に必要不可欠である。人口減少で縮小する日本市場よりもアメリカにとって中国市場の方がはるかに重要であることは疑いもない。要するに金の切れ目が縁の切れ目、ということだ。日本は、いよいよ日米安保解消後の国家戦略を真剣に考慮する時が来た。国家安全保障会議の最初の仕事は、The Day Afterを考えることだ。(おわり)