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2013-09-30 13:10

(連載)オバマ氏の「アマチュア」外交(1)

高畑 昭男  ジャーナリスト
 夏休みにオバマ米政権の内情を描いた洋書を2冊読んだ。一つはワシントン・ポスト紙副編集長、ボブ・ウッドワード氏による「政治の代償」(The Price of Politics)。もう一つはニューズウィーク誌外報部長などを務めたエド・クライン氏が書いた「アマチュア」(The Amateur)という本だ。

 前者は「財政の崖」回避をめぐる共和党首脳とオバマ大統領の醜いまでの暗闘を克明に描き、臨場感があってとにかく面白い。だが、より強い印象を受けたのは後者である。責任を巧みに他者に転嫁し、迷走しがちな政権の内情を描いている。オバマ氏1期目の体たらくに業をにやしたクリントン元大統領は、オバマ氏を「アマチュア政治家だ」と断じ、再選を狙うオバマ氏に対抗して妻ヒラリー・クリントン国務長官(当時)に出馬を勧める場面がある(本書の題はここからとったそうだ)。

 その後段では、クリントン夫妻がオバマ氏の再選を支援する代わりに、2016年大統領選ではオバマ氏がヒラリー出馬を支援するという密約が結ばれたが、再選された途端にオバマ氏側が密約の破棄を言い出して、クリントン氏が激怒する下りもある。著者のクライン氏はスッパ抜きで知られるベテラン・ジャーナリストで、エピソードの数々がどこまで精確かはわからない。

 それでも私が印象を強くした理由は、今回のシリア・アサド政権の化学兵器使用疑惑問題だ。オバマ氏が米国の軍事行動について唐突に「米議会の承認を求める」と言い出したことと趣旨が通じるように思えたからだ。オバマ氏が尊敬するリンカーンを例に引くまでもなく、アメリカ大統領は「世界一孤独な権力者」と呼ばれる。その巨大な権限の中でも戦争と平和をめぐる判断はとりわけ重く、宣戦布告(議会の権限)を除いては大統領ひとりが初めから終わりまで全ての責を負うとされてきた。(つづく)
 
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