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2009-06-28 15:37
(連載)北朝鮮核開発問題の経緯と展望 (3)
関山 健
東京財団研究員
この二つの選択肢について、当時、中国は「北朝鮮の持ちうる核兵器は、米国にとって直接的な脅威とはならず、したがって核抑止による安全確保には役立たない」、「むしろ核を持つことによって、危険国として、米ロに攻撃の口実を与える」と、北朝鮮に核保有を思いとどまるように説得したそうだ。しかし、もともと金正日と軍は核保有に傾きがちであったなか、先に見たとおり2002年10月以降米朝間の相互不信が急速に高まるにつれて、北朝鮮は核保有の方向へと自らを追い込んでいくことになる。
北朝鮮は、2006年の第1回核実験の頃には、「朝鮮半島の非核化を実現」するために米国との直接交渉を望むとの声明を出し、まだ対立回避の姿勢を見せていた。しかし、今回の核実験に際しては6月12日に、「制裁には報復で、対決には全面対決で断固立ち向かうのが、われわれの先軍思想に基づいた対応方式である」と、米国との対立も辞さない姿勢を打ち出している。すなわち、北朝鮮は、核開発をカードに米国を交渉のテーブルに座らせて、自国の安全確保と経済封鎖の打破を図ろうとする戦略から、核兵器の抑止力により自国の安全を図ろという戦略へと変化させつつあるように見えるのである。それは、北朝鮮にとってもより危険な立場へと自らを追い込む道にも思えるが、周辺国とりわけ韓国と日本にとっては無視し得ない脅威が裏庭に出現する道でもある。
北朝鮮核開発問題の行方を予想するに当たっては、同国の国内要因を意識せざるを得ない。韓国の国家情報院は、金正日氏の後継として三男の金正雲氏が指名されたとの観測を明らかにした上で、今年に入って以来一連の核開発の急転は政権承継のために「慎重な検討」を経て決定されたものだと分析している。国内での権力掌握のために強硬な対外政策が必要になるとすれば、北朝鮮が事態をエスカレートさせてくる可能性は高い。逆に言えば、北朝鮮が核開発の中止ないし放棄の引き換えに提示する条件は、かなりハードルが高くなるだろう。軽水炉の提供、米国との国交正常化に加え、韓国に対する「核の傘」も取り払うよう要求することが予想される。
これに対して日米韓は、北朝鮮の核開発を阻止するため、国連安保理が6月12日に採択した新制裁決議を厳格に履行し、関連禁輸物資に関する貨物検査や開発資金に関する金融制裁などを実施することになっている。こうした経済制裁は、たしかに北朝鮮の核開発を遅らせることには効果があるかもしれないが、これだけでは北朝鮮に核開発を断念させることは難しいように思う。(つづく)
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