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2009-06-26 14:02
(連載)北朝鮮核開発問題の経緯と展望 (1)
関山 健
東京財団研究員
6月13日、北朝鮮外務省は、同国が5月25日に実施した2度目の核実験に対する国連安保理制裁決議について、「断固として糾弾排撃する」と非難し、(1)新たに抽出するプルトニウム全量の兵器化、(2)ウラン濃縮作業への着手、(3)制裁への軍事的対応、という三項目の措置を実施するとの声明を発表した。2003年以来北朝鮮核開発問題の解決を模索してきた六カ国協議は暗礁に乗り上げ、問題の行方は非常に不透明だ。いったい、どこでボタンの掛け違いが始まり、何が事態を深刻化させ、今後どこへ向かうのか。
北朝鮮核開発問題の発端は90年代前半までさかのぼる。当時すでに北朝鮮が保有を始めていた原子力発電所は黒鉛減速炉によるものであったが、この黒鉛減速炉からは核兵器の原料となる純度の高いプルトニウムが生成されることから、米国政府はその放棄を強く要求したことに端を発する。北朝鮮が原子力発電所にこだわるのには、事情がある。同国の経済発展において電力不足は大きなボトルネックとなっているが、水力発電では冬に水不足となり発電量が落ち、火力発電では石炭がない。この点、北朝鮮は埋蔵量2600万トン、採掘可能量400万トンといわれる世界有数のウラン鉱山を有する。畢竟、原子力発電に期待がかかるのである。
黒鉛減速炉による原子力発電の放棄を飲まない北朝鮮に対して、米国政府は空爆も辞さない姿勢を見せたが、結局1994年6月、プルトニウムを生成しにくい軽水炉型の原子力発電所を日韓の支援(日本30%、韓国70%)によって提供するとともに、その完成までは米国が火力発電用の重油を提供することで関係国(北朝鮮、米国、日本、韓国、中国、ロシア)の間に合意(いわゆる「枠組み合意」)が成立し、北朝鮮は黒鉛減速炉による発電を中止した。
そのまま枠組み合意にそって進んでくれれば良かったのだが、事はそれほど単純でない。2003年に稼動開始を予定していた軽水炉は、韓国型軽水炉の導入に北朝鮮側が反発したことなどから、工期が大幅に遅れた。そうした状況下で、2002年10月、訪朝したケリー米国国務次官補が核兵器開発につながるウラン濃縮を北朝鮮が行っていると指摘したことで、事態は暗転する。ケリー国務長官が訪朝初日に核開発疑惑を強く主張したことに対し、北朝鮮側は協議2日目に「われわれは高濃縮ウラン(HEU)計画を推進する権利があり、さらに強力な兵器も作ることができる」と強がりを見せたのである。(つづく)
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