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2008-12-10 19:13
(連載)尖閣列島問題と日中台関係(1)
佐藤 考一
桜美林大学教授
12月8日午前8時10分頃、沖縄県の尖閣列島の魚釣島から6キロの日本の領海内に中国国家海洋局の海洋調査船2隻が侵入した。海上保安庁の巡視船が再三中国語で退去を求めたが、当該船舶が領海外に出たのは午後5時20分過ぎであったという。新聞報道が正しければ、海水の採取や、海底に向けてエアガンを発射するなどの行為はなく、徘徊・漂泊を繰り返したという。潜水艦の航路を探るための海水温や塩分濃度の調査や、海底地形の調査ではないだろうが、領海侵犯であることは間違いない。これについて、台湾の国民党の呉伯雄主席は「釣魚島(魚釣島の中国語呼称)問題は台日の問題」と述べ、領土問題では中国と一線を画し、問題の複雑化は望まないとの姿勢だという。
今回の事件に関連して興味を引かれるのは、今年6月10日の魚釣島周辺海域での台湾漁船と海上保安庁の巡視船の衝突の際の、台湾と中国の対応の差である。台湾では、中国寄りの国民党や親民党の党員たちが激高し、抗議船を出す騒ぎとなったが、馬英九総統は沈没した台湾漁船への日本側の賠償の申し出を聞いて、矛を収めさせた。馬総統は尖閣列島問題で博士号を取得した人で、強硬な対応を取るのではないかと思われたが、中国との今後の様々の政治交渉の際に、対日関係の悪化は有利に働かない(中台交渉が決裂した場合、選択肢がなくなる)との冷静な計算があったのであろう。一方、この時、中国では、北京オリンピックを控え、かつ日本との東シナ海のガス田共同開発交渉が進展中で、対日関係を重視する胡錦濤国家主席は沈黙を守り、反日派の党員や軍の後ろ盾があるといわれた過激派の「中国民間保釣連合会」のホームページを閉鎖させている。(つづく)
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