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2008-11-05 09:30
ジャン・モネ『回想録』の全訳・出版に当たって
近藤 健彦
明星大学教授
かねて本欄で何度か触れさせていただいている「欧州統合の父」ジャン・モネの『回想録』(1976)が、私の全訳で日本関税協会から近々出版される運びとなった。ことの起こりは、アジア共同体問題の権威進藤栄一筑波大学名誉教授のご発案・ご示唆によるものである。昨今の出版事情のなかで、仏語600ページもの翻訳を一冊にして出版できる体力のある出版社が、一体全国にいくつあるだろうか?日本関税協会は従来から公的なものを扱っている派手さのない団体であるが、私企業だけでなく公的なもののありがたさを、私としては改めて痛感させられた。
欧州の例は、もとより事情が違いすぎてそのままアジアに使えるわけではないが、にもかかわらずおよそ統合を考えるときに共通するコア部分で、考察する際の参考になればと思う。何より、コニャックの酒屋の息子に生まれ、大学を出ずに、ルーズベルト、チャーチル、ドゴール、アデナウアー、ケネディーといった時代の超一級の政治リーダーを動かしたロマンに、訳者はひきつけられた。日本で言えば確実に司馬遼太郎の描く坂本竜馬、あるいはそれ以上である。
出版社は翻訳権を取得するに当たってジャン・モネの遺族の了解をえた。ジャン・モネには『回想録』の記述によると、イタリア人だった夫人と、2人の娘がおり、巻末にはお孫さんの名前も何人か出てくる。了解をとった遺族とは、その誰だったのだろう?と想像をたくましくしている。
いざ出版となると、うるさい学者に詮索され、「この翻訳箇所は、訳語が適切でない」と責められたらどうしようか、と小さな胸をいためている。そういうところは、みんなの知恵で、識者たちが紐解く「公共財」にしていっていただきたい。アドバイスいただいた方々に、本欄をお借りしてあらかじめお礼を申し上げたかった。
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