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2008-10-08 13:30
(連載)「中国発展モデル」をどう見るか(1)
関山 健
東京財団研究員
今年は、中国が1978年12月の中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議(三中全会)において「改革開放政策」を採用してから、ちょうど30年になる。この30年間の間に、中国のGDPは70倍に成長し、いまや世界第4位の経済大国となった。さらに、IMFの予測によれば、2011年には中国が日本を抜き、アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となるという。一方で、中国では地方間・住民間に大きな経済格差があり、また、急速な成長がもたらした環境の破壊や資源エネルギーの浪費は、中国自身のみならず、世界にも大きな影響を与えているのも事実である。こうした「中国発展モデル」をどう見るか?
多くの専門家が、従来のように単純な労働集約型産業だけに頼る中国発展モデルは、ますます難しくなると指摘している。実際、繊維産業や組立産業などの労働集約的な単純加工業については、日本企業や韓国企業が中国から生産拠点を東南アジアなどへシフトする動きが出ており、中国政府自身も、こうした産業に対する外資優遇策を廃止してきている。そもそも、経済成長をもたらす長期的な要因は、労働力の増加と技術の革新である。1970年代末以来「一人っ子政策」を採用してきた中国では、2015年頃には労働力人口が減少を始め、2020年頃には高齢化問題が深刻化すると言われている。
一方、技術革新について、中国は改革解放以来長らく、主に外資による技術移転によって生産性を向上させてきたが、人件費の高騰により価格競争力を失う中では、外資の二番煎じの技術だけでは国際競争に勝てない時代となるだろう。しかし私は、中国の潜在的な経済成長力はまだまだ非常に力強いと見ている。中国は、短期的には当然景気の浮き沈みを経験するであろうが、中長期的には政府による積極的な介入なくしても、高成長を続けていくことができるだろう。まず、労働力について、近い将来に労働力人口の総数が減少するといっても、まだ農村には1億人とも2億人とも言われる余剰労働力が存在しており、彼らが農業以外の分野へ移動していけば、まだまだ労働力の新規供給の余地がある。
また、過去30年間、中国発の技術革新があまり出てこなかったのは、安価で豊富な労働力に支えられた中国製品は、国際社会において十分な競争力を維持してきたため、コストとリスクをかけてわざわざ技術革新をする必要がなかったからである。今後は中国も過去と比較すれば価格競争力が落ちてくることを考えれば、技術革新の必要性が高まるだろう。その必要性に応える人材を中国は十分に抱えている。中国には理系の高等教育を受けた人材が豊富に存在しており、その研究開発の潜在能力は極めて高いと思われる。そもそも中国では、文系中心の日本と異なり、高校生の過半数が理系を選択する。その後、清華大学を頂点とする理系の大学で高等教育を受け、少なからぬ卒業生が欧米へ留学して世界最先端の技術と教育を身につけている。(つづく)
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