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2008-06-03 11:01
(連載)対ミャンマー国際人道支援の課題(1)
首藤もと子
筑波大学教授
国連事務総長とASEAN外相会議の努力により、ミャンマーに対する国際人道支援がとにかく開始されることになった。あまりに遅すぎ、あまりにも不十分であるが、しかし軍政が国際支援の受け入れに同意したことは、2つの点で重要である。一つは、この国際支援の試みが「人道的介入」や「保護する責任」のような一方的行動とは異なる形の人道的関与と地域的な復興支援の前例になるかどうかである。今回は、ASEANが90年代に提唱していた「建設的関与」とは異なる。5月初めに通過したサイクロンで甚大な被害が出たにもかかわらず、軍政は救済活動を行う誠意を示さず、国際支援の申し出を拒み続けていた。
自然災害は不可避であるが、その後の救援活動に着手せず、軍が支援団体の自発的な救援活動を妨害し、国際支援を拒絶して、多数の被災者を放置していることは、「人道に対する罪」に相当する。そこで、国連安保理では国際社会にその被災民の保護に関して強制代行する責任がある(保護する責任)という議論すら提案されていた。この提案は反対されたが、これから軍政の同意を得て国際支援が開始されることになった今、どのようにして軍政の同意の範囲を拡大しつつ、効果的に人道支援の目的を達成していくか、国連やASEAN諸国の外交力が問われる。
もう一つは、この国際支援の取組みが制度化され、長期的な復興支援を展開できるか、それにより構造的な変革への道が開かれるかどうかである。軍政は90年の総選挙で惨敗したが、権力を手放さないまま、8割の議席を獲得した国民民主連盟(NLD)の指導者や支援者を拘束した。それ以後、無憲法の状況が続いていたが、この5月に新憲法案を問う国民投票で「92パーセントの賛成」を得たとされる。しかし、新憲法案についての情報は国民に提供されず、投票は南部デルタ地帯の被災者を放置したままで実施された。(つづく)
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