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2007-10-15 17:27

連載投稿(2)ドル暴落に備え「クローズドな地域統合」を

山下英次  大阪市立大学大学院教授
 今後、われわれアジアにとって最大の経済的脅威は、内から発生するものというよりも、米ドルの暴落リスクであろう。その意味からは、われわれアジアは、アメリカと同じ船に乗っているわけにはゆかないのである。日本人は、その事実を直視しなければならない。ドルの暴落によって生じる外部の混乱から自らをプロテクトするために、アジアは地域統合を深めていかなければならない。FTAぐらいで終わってしまったのではほとんど意味はない。とりわけ、アジア域内の為替相場制度の共通の枠組みが必要である。具体的には、私がかねがね主張しているように「アジア版EMS」の構築がブレイクスルーとなる。

 貿易面では、やはり次の段階として関税同盟を目指すべきかもしれない。いずれにせよ、外的な混乱(ショック)から域内をプロテクトするためには「クローズドな地域統合」が不可欠である。「開かれた地域主義」(open regionalism)というと、表面的には何か麗しいことのように聞こえるが、現実には「開かれた地域主義」で事を成すことは決してできない。そもそも、「開かれた地域主義」とか「開かれた共同体」という言葉それ自体が自己矛盾であり、論理的な定義付けは不可能である。
 
 アジアは、ヨーロッパとは違うし、またこれからの時代は「開かれた地域主義」だという人もいるが、われわれが現在直面しているドルの暴落リスクから自らを如何にして守るべきかという命題は、かつてヨーロッパが直面し、その解決策に向けて彼らが今日まで取り組み、営々と成果を積み上げてきた問題と、本質的には些かも異なるものではない。

 ドルの暴落は、いつ起こっても不思議ではないので、残念ならが、アジアの枠組み作りは次の暴落までにはおそらく間に合わないであろう。しかし、少なくともその次の暴落には間に合わせなければならない。今後、ドルはいくつかの暴落を経験し、そうした過程を経て、米国経済は急速に衰退していくのではないだろうか。(おわり)
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連載投稿(1)「開かれた地域主義」への疑問 山下英次  2007-09-30 10:32
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