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2007-09-20 10:55
連載投稿(2)東アジア版石油先物市場を育成せよ
武石礼司
東京国際大学教授
国内情勢により、完全な国際価格の導入が困難な後発諸国は依然として存在する。ただし、世界において現在、市場価格を受け入れることが期待されるにもかかわらず、対応が遅れており、そのために、近隣諸国に多大の影響を与えている国が、少なくとも2カ国存在している。そのうち1カ国は中国であり、他の1カ国はイランである。
中国は、国内の石油製品価格を何度も引き上げ、国際価格に近づける努力をしてきている。ただし、政府が価格をコントロールする権限を手放そうとしないために、2007年に入ってからの原油価格の再上昇に国内価格が追随しきれず、中国の国内石油企業は、石油製品を国内供給にまわさずに、利幅が稼げる国外輸出に振り向けるという動きが出現している。政府がコントロールした価格で、中国において石油製品の供給が続けられることは、当然、産業界においてもモラルハザードをもたらし、省エネに向けた産業界の真摯な努力を阻害し、国内における公正な価格付けに基づく商行為を妨げ、賄賂の横行を持続させる一助ともなるに違いない。社会主義市場経済を標榜する中央集権的な現政権の持つ制約が、こうした国内向けの価格設定という面でも現れていると言うことができる。
また、もう一カ国、問題となっているのはイランである。イランでは、世界最安値とも言われる安価な石油製品(特にガソリン)供給が行われており、イラン国内の石油消費量は急増している。2006年のイランの原油生産量は434万バレル/日であるが、国内石油消費量は167万バレル/日に達している。品質の悪いガソリンを、旧式の燃費が悪い自動車で使用するために、イラン国内の主要都市では、街路を歩いているだけで、頭痛がし、臭気で体調を崩しそうになるほどである(筆者も経験した)。国内のガソリン価格があまりにも安いために、近隣諸国への不法な輸出も盛んに行われていると言われており、イラン政府は、国内供給量の不足を補うために、ガソリンを近隣諸国から輸入して、国内供給に振り向けている。
市場商品化しており、国際価格が存在している石油のような商品には、公正な価格付けが行える商慣行の育成・導入を各国が進めるべきなのは、当然である。さらに、北米(NYMEX)および欧州(ロンドン、ICE)という石油の2大先物取引市場の価格動向ばかりに右往左往するのではなく、アジア地域の需給の動向を反映した価格付けが出来る石油先物市場の成立を、東アジアで目指し、市場の育成と各国間の企業の相互乗り入れを進めていく必要が明らかに存在している。(おわり)
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投稿履歴
連載投稿(1)エネルギー価格の市場化と途上国の対応
武石礼司 2007-09-19 17:24
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連載投稿(2)東アジア版石油先物市場を育成せよ
武石礼司 2007-09-20 10:55
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