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2024-10-22 08:17
(連載1)初のG7国防相会合が見せる「二重基準」
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
10月19日、初のG7国防相会合が開かれた。1970年代にオイルショック後の世界経済情勢を協議するために開催された会議を発端とするG7は、伝統的には経済問題を主眼とする議題を話し合ってきた。他方、近年は、広範な問題を扱うようになってきており、首脳会議で安全保障問題を話し合うことは常態化していた。外相及び経済関係の閣僚の会議は、毎年行われている。その意味では、国防相会合の開催は、驚きには値しないかもしれない。
折しもロシアでBRICS首脳会議が開催される直前のタイミングだ。BRICSは、「脱ドル化」の共通関心を前面に出しながら、昨年に倍増させた加盟国の数を、さらにいっそう増加させてくると見られている。購買力平価GDPでは、BRICS諸国は、G7よりも大きくなっている。BRICSの存在感は高まる一方だ。G7としてはさらに強く対抗する姿勢を見せることが必要なのかもしれない。だが、日本(とEU)を除くG7メンバーが、NATO加盟国だ。EU加盟国とNATO加盟国もほとんど一致している。日本がNATO会議に招かれる機会が増えてきており、連携の度合いは高まっている。安全保障面での政策協調は、NATOが中心になるのが当然だ。G7で安全保障問題を話し合っても、NATOで話し合われている路線と異なることを決めていくことは想像できない。
もちろん、様々なチャンネルを持ち、繰り返し懇談する機会を持って、悪いことはないだろう。確かに実態としては、拡大しすぎたNATOの中には、異なる意見を持つ諸国が目立ちがちだ。ウクライナ加盟をめぐって、ハンガリーがすでに反対を表明していることなどが、その象徴的な事例だ。その点、G7は結束度の高い国際協調体制を見せることはできるだろう。中央アジア諸国が加入しているOSCE(欧州安全保障協力機構)が機能不全に陥っている現在、G7諸国にとっては、たとえ日本だけでも、アジアの国と政策協調をする機会は、貴重だ。他にない、と言うほど、米欧諸国の外交チャンネルの裾野は狭まっている、という残念な状況の裏返しでもある。今回のG7国防省会合の機会に発出された「共同宣言」文を読んでみたが、実際に目新しいところはなかった。
議長国イタリアが開催を提案した、と報じられており、その関心対象であるレバノン駐留のUNIFILの安全確保の重要性を訴える内容は入っている。これは最近の事件に対応している、という意味で、多国間協議を通じて公式文書に入ってきたのは、あるいは初めてかもしれない。ただイタリア、スペイン、フランスなどの欧州諸国のみならず、その他のUNIFILに要員を提供している40カ国が共同で発した声明などは、すでに発出されている。しかも「共同宣言」では、ハマスやイランが、イスラエルへの攻撃を理由に名指しで非難されているのに対して、イスラエルを名指しした非難はない。むしろG7諸国は、イスラエルの安全保障に関与している、といったことが謳われている。UNIFIL要員の安全確保に加えて、一般的な市民の保護に関して、国際人道法の遵守が謳われている。しかしイスラエルの行動を問題視している具体的な記述は、そこには登場しない。(つづく)
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