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2007-09-07 19:22
連載投稿(1)次期大統領に最も近い男、李明博氏と日韓関係の行方
大江志伸
読売新聞論説委員
国家と国家の関係は、「時代の流れ」という抗しがたい要因の制約を受けるだけでなく、国家指導者同士の好悪の感情や相性といった「生身の人間」要素が強く作用する場合がある。近年では、小泉外交がその典型だった。小泉首相は、9.11同時テロ後、間髪を入れず米国支持を打ち出して、ブッシュ大統領と緊密な個人的関係を築いた。その結果、対テロ戦争の全面展開という「時代の流れ」と「生身の人間」の両面で、日米関係の歯車はプラスにかみ合う蜜月期を創出した。
逆に「時代の流れ」と「生身の人間」の両面で悪循環に陥ったのが中国との関係である。超大国・中国の出現という「時代の流れ」に、日本人は戸惑い、中国脅威論が繰り返し論じられた。小泉首相は就任直後から「中国の発展は好機」との公式論を展開したが、靖国参拝を重ねて中国の反日ナショナリズムに火をつけ、日本側の嫌中ムードもあおる結果となった。13年余の長期政権を率いた江沢民氏、後継の胡錦濤氏との個人的関係も険悪なまま、小泉首相は政権を去った。
小泉政権下の対韓国関係は、元来、対米関係と対中関係の中間、もしくは対米関係寄りに位置すべきものだった。盧武鉉政権は発足当初、金大中前政権の「対日未来志向外交」を受け継ぐ方針を打ち出し、首脳会談の場でも「過去の問題には触れない、責任も求めない」と確約していた。日韓関係を未来志向という「時代の流れ」に乗せる絶好のチャンスだった。しかし、実際には日中関係と共振するように、日韓関係も悪化の一途をたどった。日韓関係が冷え込むにつれ、盧武鉉大統領は自身の「反日体質」を隠そうともせず、小泉首相も対米一辺倒へと傾斜していった。「生身の人間」としての小泉・盧武鉉の両氏に一定の信頼関係さえあれば、ここまで事態は悪化していなかったはずだ。仮に、両者が強固な信頼関係を築いていれば、日韓関係はもちろん、小泉政権の対アジア外交の風景はまるで違うものになっていた、と筆者は思っている。
幸い、日韓の未来志向という「時代の流れ」は、多層化する相互交流に支えられ、極端にパワーダウンすることはなかった。安倍首相は、就任直後に中国に先立ち韓国を電撃訪問して関係改善への糸口をつけた。小泉首相と反目した盧武鉉大統領は2008年2月に退任し、新政権が発足する。「時代の流れ」と「生身の人間」の両面で日韓関係を立て直す好機だ。そのカギを握るのが次期大統領に最も近い男、李明博氏の対日観であろう。
李明博氏は8月20日、最大野党ハンナラ党の大統領候補に正式に選出された。李氏は昨秋以降、与野党を含めた大統領選候補の支持率で30-40%を確保し、常にトップを走ってきた。公認候補選出直後の支持率調査では、前回の32.4%から53%に跳ね上がった。対する与党系候補予定者は10%に届いた候補はいなかった。よほどのサプライズがない限り、野党ハンナラ党が10年ぶりに政権を奪還する確率は高い。(つづく)
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大江志伸 2007-09-07 19:22
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