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2022-10-06 09:18
(連載2)日本がとるべき「新しい資本主義」の姿について
真田 幸光
大学教員
そこで、労働生産性とは何かと見ると、「インプットした資源に対してどれだけのアウトプットが生まれたかを表す指標」と言え、更に、「インプットとは、投入した労働力、つまり業務に当たる従業員数や時間当たりの労働量を指し、アウトプットは売上高や利益、付加価値といった労働によって生まれた成果」とされています。そして、日本の労働生産性は先進7カ国の中でも最下位、OECDの中でも22位となっているということは、つまり、日本の付加価値を生み出す力が弱いこと、一つの仕事に携わる社員数が多く、時間を掛け過ぎていることなどが先ずは挙げられると考えるべきであり、アメリカやドイツと比べると非常に顕著です。同じ金額を稼ぐ為に投入する労働者も労働時間も、日本はこの例えばこのアメリカやドイツの2カ国より多いことは歴然としています。
世界、就中、先進国では、目まぐるしく変動する国際社会で労働生産性を落とさない為には、内需拡大による消費中心経済にシフトするか、付加価値の高い製造業にシフトすることが必要であると考えられています。しかし、政策の失敗などを背景としてバブル経済が崩壊した日本は、内需中心の経済にも転換しきれず、しかしながら、内需が一定程度あったことから、無理して外需拡大を目指し、グローバルマーケットシェアを抑える為の付加価値の高い製造業にも結果として転換して切れていないということが、国際社会での競争力を失った大きな背景にあると言えるのではないかと私は考えています。ここで、同じモノ作り大国と言われているドイツとの差を考えてみると、残念ながら、労働生産性に於いて日本はドイツに大きく水を開けられているのが現状です。指標を見ると、日本とドイツの違いについては、以下のように指摘されています。
1. ドイツの年間労働時間は日本よりも350時間ほど短い。
2. ドイツ人は基本的に残業をしない。仮に経営者が残業を強要した場合、罰金や禁錮刑などの厳しい罰則が科せられる。
3. ドイツ人は個人の生活を重視する傾向が強く、労働はあくまでも生活の糧を得る手段であると割り切っている。その為、過剰なサービスや上司への忖度を必要とせず、無駄な長時間労働を強いられることもない。
4. その分、効率重視で仕事に当たる為、ドイツ人は最小の手間で最大の成果を上げることを得意としている。
私は、こうした点も否定はしません。しかし、現場で、特に製造業の現場で汗水流して働いている日本の製造業関係者、就中、日本の中小製造業関係者の方々には、こうした議論の展開には、「異論」がおありになるのではないでしょうか。
私は、第二次世界大戦後の日本がその技術力の高さから良いものやサービスを安く米国に提供する、言葉は悪いが「モノづくり奴隷」として生かさず殺さずで、今日まで米国に扱われてきた国ではないか、と考えます。実際に私の経験では、米国の駐韓企業トップであった人物は、1985年に私に対して、「アメリカという国は、アジア各国を安くてよいモノ、サービスを提供させる国として育てている。1985年のプラザ合意を経て、これからは、日本だけではなくアジアNIES、東南アジア諸国、そして将来的には中国本土をもモノづくり奴隷国家として育て上げ、日本と競争させ、更に安くてよいものを供給させるように動く。そして、これらモノづくり奴隷諸国が、米国の言うことを聞かなければ、国際標準となる金融、情報、即ち、基軸通貨と根拠法を巧みに利用しつつ金融面でのディフォルトに追い込み米国に屈服させるように動く」と語りました。実際に、1997年のアジア通貨危機では、台頭著しかったアジア諸国は、米ドル債務の多さと自国通貨の米ドルに対する急激な低下を背景にして国家破綻に陥ったと私は現場の感覚から捉えています。
そして、日本が米国の呪縛から脱しきれず今でも良いものサービスを安く海外に提供し続けていることから、安く売っているので売上高は上がらず、利益も高まらず、付加価値が低くならざるをえず、よって労働生産性も低くなっている、と私は考えています。即ち、日本は、その技術力に対して海外から正当なる対価を頂いていない、ということです。このことが付加価値の低さに繋がり、労働生産性の低さに繋がっているのです。今、日本がすべきことは良いものやサービスは高いと考えることであり、自らがアウトプットしたものを正当なる評価で売りにいくという明確な姿勢です。ここに知恵を働かせ、努力をしない限り、日本は三流国に低下していきます。日本が、作り出すものやサービスのグローバルな価値を俯瞰して値決めをし、良いものを高く売っていくという姿勢に転換していかない限り、日本の再生はないと考えるべきなのです。そして、こうした経済、産業体制に変えていく、ここに国内での雇用機会を構築していくことこそが、日本が取るべき新しい資本主義の姿です。単純に国内の投資、投機を拡大させれば、むしろ、これまで貯えた日本の富を更に海外に流出させてしまうことになりかねないと考えるべきと私は確信しています。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)日本がとるべき「新しい資本主義」の姿について
真田 幸光 2022-10-05 17:53
(連載2)日本がとるべき「新しい資本主義」の姿について
真田 幸光 2022-10-06 09:18
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