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2022-09-28 15:38
(連載2)岸田政権はなぜ為替介入をしたのか
倉西 雅子
政治学者
以上に金利差主因説に沿って述べてきましたが、それでは、日本政府が説明するように、投機が主たる要因と言うこともあり得るのでしょうか。日米金利差による長期的な流れが円安に振れている限り、それを見越した資産家やヘッジファンド等が投機的な行動に出てもおかしくはありません。否、既に上述した‘円の売り浴びせ’を仕掛けている可能性もありましょう。となりますと、日本国は、既に通貨危機の淵に立たされていることとなります。
その一方で、もう一つ考えられるのは、日本国政府が、政府介入はないとみて投機に走る投機筋の利潤獲得のチャンスを意表を突く形で阻止したというものです。先物の金融取引では、契約日から1ヶ月や半年後といった、ある一時点における相場に基づいて決済されます。この一時点の相場こそ重要なのですが、決済時の相場を政府が市場介入によって操作することができれば、投機筋の目論見を意図的に外すことができます。
今回の介入は、将来的な円安の更なる亢進を見越して先物取引やヘッジ取引を行なった投資家やファンドに対して、日本国政府が、‘日本円を投機の対象にはさせない’という意思表示の意味を込めて敢えて損失を被らせる、あるいは、利益幅を縮小させたことになります(過去にも、財務省には投機筋を唖然とさせた伝説的な人物がいたとも・・・)。投機主因説が正しければ、今般の介入は円安を利用した投機が利益にならない前例となり、投機筋の動きを牽制したことにもなりましょう。仮にこの説が正しければ、今後は、円相場の下落は鈍化するかもしれません。
以上に金利差主因説と投機主因説の両者について述べてきましたが、魑魅魍魎も徘徊する金融界のことですから、別の思惑も絡んでいるのかもしれません。あるいは、これらの要因が複合的に作用した結果、あるいは、相乗効果とも考えられましょう。何れにしましても、今般の政府介入については、通貨危機を招くリスクも認識されるだけに、複雑かつ連鎖的な波及効果をも考慮しつつ、より掘り下げた多面的な考察や分析が必要なように思えます。そして、常々、財務省や海外の金融筋の誘導に弱いという風に見られがちな岸田首相が、その界隈の主張に影響されて通貨政策の継続性を軽視した市場介入をしたのではないことを願うばかりなのです。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)岸田政権はなぜ為替介入をしたのか
倉西 雅子 2022-09-27 21:37
(連載2)岸田政権はなぜ為替介入をしたのか
倉西 雅子 2022-09-28 15:38
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