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2022-08-03 14:40
(連載1)ウクライナ復興資金、提供への課題
倉西 雅子
政治学者
ウクライナ政府の試算によれば、同国の復興には、凡そ100兆円を超える資金を要するそうです。破壊されたインフラ施設や中世の面影を残す街並みまで元の通りに戻すには、100兆円があってもまだ足りないかもしれません。そこで、海外からも復興資金を調達するために、スイスで国際会議が開催される運びとなったのでしょう。しかしながら、ここで一つ、素朴な疑問があります。
ウクライナ復興に関する素朴な疑問とは、仮に、ロシア軍が東部地域の占領を確かにし、親ロシアの二つの「独立国家」(「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」)をロシア政府が維持するとすれば、同地域の復興はロシア側の責任、即ち、巨額の復興資金もロシア側の負担になるのではないか、というものです。
スイスの国際会議では、戦後復興の主たる担い手はウクライナとみなしております。その前提には、同国がロシア軍による占領地を奪回し、完全に自らの施政下に置く状態の実現があります。東部地域を回復して初めて、ウクライナは自らの復興事業をその資金源の大半が海外からの融資や投資等であれ自らの政策権限並びに予算を以って進めることができるのです。
それでは、実際に、大半の国からは国家承認を得られなくとも、同地域において二つの親ロ国家が存続し、ロシアがその事実上の後ろ盾となった場合、調達された復興資金の行方はどうなるのでしょうか。既に、欧州評議会銀行がウクライナ復興債を発行していますし、日本国のJICAをはじめ、復興債発行の動きが世界規模で広がっています。(つづく)
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