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2022-05-11 20:42
(連載1)第三次世界大戦を真剣に考えることから逃げてはならない
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
ウクライナ戦争の結果、「米英仏」と「中ロ」という、国連の安全保障理事会常任理事国を二分する対立がより際立つ結果となりました。安保理常任理事国間の対立ということはすなわち「核保有国を二分する対立」ということでもあります。このほかに、核保有国を自認する北朝鮮がすでに今年に入って13回のミサイル発射実験を行いその運用能力を誇示しています。またインドとパキスタン、イランやイスラエルなどもその疑いがあります。ちなみに、日本もIAEAから潜在的に核兵器の保有できることを危惧されている国ではあることは間違いがないのです。
さて、ロシアが実際に正規戦を他国の領土で行うにいたり、第三次世界大戦はあるのかということは目を背けてはいけない問題です。ズバリ、「近未来にある」というように考えられるでしょう。そもそも戦後すぐに始まった、いや戦前のロシア革命から、ずっと続いている東西冷戦の根底にある対立要因が政治体制の違いにあるということは、旧ソ連のペレストロイカや中国の改革解放からも明らかです。経済が国際化し自由主義経済が拡大しても、東側では政治がそこに介入し、人権や経済的な行為を、または個人の活動や民族活動を制限しまたは弾圧することが現代でも続いています。そんな状況においては、日本をはじめとする西側諸国の国民感情は非融和的になってしまい、東側の商品が届いても歓迎できないということになります。また、彼らは拡張主義でもあり、いつ自分の国がその体制に飲み込まれるのかという潜在的な恐怖から敵対意識が出てきてしまうということになるのです。
中露の積極的な行動を前に、日本は独立した主権国家としてどう向き合うのか態度を明らかにしてゆくことが求められます。また、それは安全保障においてアメリカに依存している状態であっても、アメリカが間違えている場合は毅然と声を上げられるように、また中国やロシアの軍事的な威圧に屈することなく自国の正義を貫けるように、態勢が整っていてこそなのは言うまでもありません。
しかし、「正義」というのは、立場と政治的な状況、そしてそれを取り巻く環境によって異なってきます。旧ソ連が崩壊した後に、東欧各国でスターリン像が倒されたように、また昨年などアメリカでリンカンの像が倒されたように、過去に英雄であっても、現在の価値観から、その英雄の事績が再評価されることが少なくないのを見ると正義を掲げることの難しさを痛感します。このように通時的な正義がないのと同様に共時的な正義もまた成り立ち難いものです。日本が正義と思っていることが、必ずしも、今回で言えば、ロシアや中国から正義であるというような評価をされるものではないのは、火を見るよりも明らかだからです。この国家間の正義の乖離は大きな問題になり、軍事力による解決しかできないほどに為政者が思い詰まると、戦争が発生します。特に、敵国が日本、またはその同盟に勝てると思った瞬間に、またはそのまま放置したら、ロシアや中国の為政者が自分の地位が危ないと思った瞬間(このような戦争を不合理の合理といいますが)戦争が発生することになるのです。(つづく)
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