ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2022-02-10 20:19
(連載1)権威主義という政治用語は誤解を生む
中村 仁
元全国紙記者
新聞、テレビ、書物によく登場する権威主義という政治用語が気になって仕方がありません。「中国、ロシアなどの権威主義の国」という言い方は止めて、「強権的な政治国家」と呼ぶようにすべきです。もちろん、政治学では権威主義という学術用語をある程度、定義していますから、この表現を使うのをやめるわけにはいかないでしょう。しかし、せめてメディアが使うときは「権力主義政治」か「強権的政治」という表現に一本化したらよい。
権威主義は「authoritarianism」の直訳です。権威を意味する「authority」からきています。ところが、日本語自体の「権威」という言葉は、本来肯定的なニュアンスが強い。「権威主義の国家」と呼ぶと、「いいんじゃない」というイメージをつい持ってしまう。メディアは直訳でなく「超訳」でやるのが正解です。「権威ある賞」「心臓外科の権威」「学会の権威」など、日本語の権威は、肯定的な意味で使われます。「すぐれた人物、事物」、「社会に承認された信用」、「強制でなく自発的に生まれた権威」です。
それが権威主義、例えば「中ロのような権威主義の国」となると、一転して、「権威」は否定的なニュアンスを伴う。それなのに、日本語が持つ「権威」の肯定的な印象がどうしても付きまとってしまう。「権威主義」は「権威」と正反対の語感を持っていからです。「中国は香港の民主主義を抑え込み、権威主義的な統治を強めている」とか、「世界はどこへ向かおうとしているのか。権威主義が強まり、民主主義は衰退している」などは、権威主義を批判的な意味で使っています。
さて、バイデン米大統領は昨年12月、オンラインで「民主主義国サミット」と開きました。「中ロを初めとする強権的な統治の権威主義が世界で勢いを増している」、「民主主義の理念を再確認して、権威主義との対決姿勢を示した」と報道されています。(つづく)
<
1
2
>
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
(連載1)権威主義という政治用語は誤解を生む
中村 仁 2022-02-10 20:19
(連載2)権威主義という政治用語は誤解を生む
中村 仁 2022-02-11 16:36
一覧へ戻る
総論稿数:4661本
東アジア共同体評議会