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2022-01-19 08:55
(連載2)アメリカが向き合う「10大リスク」
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
また、その仮想敵国が小さな国であるには、そのようなリスクにはならない。もしもその小さな国と戦争になった場合も、その武力衝突の規模は自ずから限定されるし、事前に相手国の選択肢を制御できる余地が大きいからである。つまり、仮想敵国がありそれなりの規模の場合にリスクにつながるということになる。
さて、アメリカの研究機関なので、アメリカ政府ではないという前置きをしながらも、アメリカの場合、このような研究機関が広報機関の役目をする場合が少なくないので、そのような意を込めて考えておく。その意味で1位4位に中国、2位にGAFA、5位がロシアで6位がイランということになっている。その上、なんと10位にはトルコが入っているのである。要するにトランプ時代のアフガニスタン、イラク、シリアといった比較的規模の小さい国々が抜けた一方で、バイデン時代には、ロシアが再び存在感を増し、中国とは経済的な面だけでなく、軍事的な面でもハードに向き合わなくてはならなくなったということだ。また4位に中国の経済問題が入っているが、中国の国力そのものがアメリカに重大な影響を与える規模の不確実性だということが意識されているということだ。このように考えれば、今回のウクライナ情勢におけるバイデン大統領の初期対応が象徴的だが、中国にせよトルコにせよ人種問題にせよ、バイデン大統領の踏み込みの甘い政策が、アメリカの敵を増やす、つまり超大国間の紛争リスクを増やす政策であることは理解できるのではないか。
そしてそのことによってアメリカ国内の分断がなお続き、中間選挙が大きなリスク項目になるのである。どう転ぶかによっては10大リスクで挙げられた国々を利することになろう。先ほども解説したように「リスク」というのは「不安」とか「不安定要素」であり、「確実な危険の存在」ではない。つまり、中国(実際には1位は中国のゼロコロナの失敗となっているのであるが)の問題が非常に大きく世界を不安定にさせている。
さて、台湾問題や南シナ海問題、クリミア問題、そしてイランの核問題というような現在も続く紛争課題を悪化させた要因であるオバマ大統領はそれらの外交問題が深刻化する前にトランプに引き継ぐことができた。オバマ政権の副大統領であったバイデン氏はこの顕在化したリスクの処理から逃げ切ることはできまい。なかなか困った話である。重要なのは、その時に日本が何をできるのかということだ。今の岸田内閣、林外務大臣は、安倍、菅時代に比べて充分に米国と意思疎通できているのかも「不安」なところだが、特に中国絡みでは提案型で、世界をリードする必要があるが、はたしてできるのか。日本にとってはそのことの方がリスクなのかもしれない。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)アメリカが向き合う「10大リスク」
宇田川 敬介 2022-01-18 18:50
(連載2)アメリカが向き合う「10大リスク」
宇田川 敬介 2022-01-19 08:55
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