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2021-12-28 20:54
やる気が無いのではなく、やらない気がある
荒木 和博
特定失踪者問題調査会代表
12月10日に予備役ブルーリボンの会のシンポジウムがありました。河野克俊統合幕僚長、織田邦男・元空将と竹下珠路・特定失踪者家族会事務局長の3人のゲストのお話はそれぞれ非常に重要な視点を示していました。ひと言で言えばこの国の構造が国民を救うようになっていないということです。私からは防衛省の情報開示請求への回答を例に、「防衛省の役人は『やる気がない』のではなく『やらない気がある』」とお話ししました。何度「自衛隊に拉致被害者救出のための任務付与を」と政府に申し入れても「憲法・国際法の制約がある。不断の検討をしている」の繰り返し。ならばどういう「不断の検討」をしているのか」と去年情報公開を求めたら、今年になって厚さ8センチにもなる書類が返ってきました。そこには「不断の検討」を証明するものは一つもなく、分かったのは極論すれば「絶対に取り返さない。拉致されたら何もできないから北朝鮮で死んでも仕方ない」という役所の論理です。
全体の文書については、マスコミの方でもあるいは一般でも、関心のある方がおられたらお送りします(ZIPファイルで140MBくらいあるのでメールの添付はできません)。ここでは一つだけ紹介しておきます。「(土本審議官用メモ) 拉致問題対策本部想定」とタイトルのある文書で、自民党拉致問題対策本部の会合で質問を受けたときの答弁のアンチョコです。時期は書いていませんが土本審議官というのは現在防衛省整備計画局長の土本英樹氏で、審議官は平成28年(2016)から30年(2018)まで務めていますから、この間であることは間違いありません。そこには「(議員立法ができないものかと考えており、何か知恵はないのかと問われた場合)」という想定質問があり、これに対して次のような「模範解答」が書かれています。
「議員立法に関しては、防衛省としてお答えする立場にはありませんが、議員立法とはいえ、上で申し上げたとおり、敢えて憲法上、国際法上のものを含む様々な制約やリスクにチャレンジして、自衛隊による拉致被害者の救出に関する立法を目指すことは、それ自体大きな判断が必要ではないかと思われます。」拉致被害者の救出に自衛隊を使うことに現行法で制約があるなら、その制約を克服する方法はないかという質問が出たら、要は「法律を作るな」と命じろというのがこの模範解答の趣旨です。国民から法律を作ることについて負託を受けた国会議員に対して、明らかに越権であり、これはひいては国民を愚弄したものだと思います。なお、おそらくこのときの会議には私も出席していたので、記憶に間違いがなければ答弁自体は実際には行われていません。
憲法や自衛隊法は国民を守るためにあるはずです。国際法上も拉致被害者を救出することに問題があるはずはありません。そもそもわが国の政府は米国から言われたことなら日本の法律を逸脱していても従順に聞いてきたのですから、救おうと思いさえすればどうにでもなるはずです(こういう役所の理屈を見ていると米国に協力を頼むというのも、米国政府から日本政府に「拉致被害者を自衛隊で救出せよ」と強要してもらった方が早いのかも知れないという気持ちにすらなります)。先日起きたアフガニスタンでのタリバン政権の樹立においても、拉致問題と同様のことが起きたことを忘れてはなりません。外国で戦乱に巻き込まれるなどした日本人は何度も日本政府から見捨てられています。これは構造から変えるべきことであり、少なくとも「やってくれるだろう」という淡い期待だけは持ち合わせない方が良いのではないでしょうか。
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