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2021-12-11 14:28
(連載2)半導体政策の最適解は日本企業支援
倉西 雅子
政治学者
もっとも、政府の支援による競争の歪みの問題は、民間企業同士のM&Aや投資でもありませんので、競争法の適用対象外とする反論もありましょう。しかしながら、たとえ競争法上の問題が問われないとしても、今度は、通商政策における政府支援の問題が待っています。何故ならば、WTOのルールでは、民間企業に対する政府補助は、公平で公正であるべき通商を歪めるとして、してはならない行為とされているからです。もっとも、同分野でも、今般の日本政府の支援は、半導体の安定供給が目的ですし、自国企業の輸出競争力の強化のためのものではありませんので、WTOのルールが禁じる政府補助ではないとする意見もあるかもしれません(日本国内の海外メーカーが製造した半導体が一切輸出されないとすれば、国内市場における海外企業製品のシェアの拡大は必至に…)。しかしながら、表向きの目的はどうであれ、公的補助金の支給は、現実として支援を受けた特定の企業の輸出競争力を高めますので、上述した競争政策における問題性と重なるのです。
また、仮に日本国政府が 「5G」の早期移行やDXによる自国の全面的なデジタル化を目指しているとしますと、半導体を海外製品に大きく依存する状態は、日本経済の基盤を外部勢力に押さえられてしまうことを意味します。今後は、政治問題に起因する半導体不足も発生しかねず、半導体が’産業のコメ’である以上、’兵糧攻め’にあう可能性も否定はできないのです。デジタル政策においても、海外メーカーの支援策は望ましいとは思われないのです。
そして、もう一つ、重要な点は、安全保障政策におけるリスクの問題です。半導体は、あらゆる産業の基盤となる故に、軍事面においても決定的な意味を持ちかねません。軍拡に邁進してきた中国にあっても、先端兵器の開発に置いて‘アキレス腱’とされるのが半導体であり、アメリカが経済制裁の対象としているのも、同国は、未だに半導体を完全に内製化し得る段階に至っていないからです。中国による台湾有事を考えれば、日本国もまた、半導体の海外企業依存は、安全保障上の弱点となりましょう。
以上に述べてきましたように、半導体政策を決定するに際しては、様々な政策領域における比較考量を要します。そして、短期的な供給不足の改善のみならず、長期的な視野から関連するあらゆる政策分野から光を当ててみますと、海外メーカーへの支援策が最適解とは思えないのです。グローバル市場、並びに、国内市場における公正で公平な競争の実現、自国経済の自立性、並びに、安全保障上のリスクなどを勘案しますと、私見ではありますが、WTOにおいて問題視されていない現状からすれば(もっとも、今後、政府補助の在り方は議論を要するかもしれない…)、自国企業を対象とした集中的な支援が最適解なのではないかと思うのです。(おわり)
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(連載1)半導体政策の最適解は日本企業支援
倉西 雅子 2021-12-10 22:48
(連載2)半導体政策の最適解は日本企業支援
倉西 雅子 2021-12-11 14:28
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