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2021-11-27 00:13
(連載1)COP26と日本の石炭発電について
鈴木 馨祐
衆議院議員
COP26で議論となった石炭発電について思うところを書かせていただきたいと思います。この約15年、様々な立場で国内での議論に携わってきましたが、事実に基づかない先入観により議論がゆがめられてしまっている印象は否定できません。
まず「高効率の石炭発電はCO2の排出量が低い」という点。CO2排出量は、今、経済産業省が高効率と称している超々臨界(USC)で710g/kWh、まだ実証段階のIGCCで650g/kWh、実用化が2030年過ぎといわれているIGFCでも590g/kWhとなっていて、すでに実用化されている天然ガス発電であるガスタービン複合炉の340g/kWh、IGFCより早く実用化が見込まれるGTFCの280g/kWhと比べれば、どんな最先端のものでも天然ガスの二倍近いCO2を排出するというのが事実です。確かに日本の石炭発電技術は硫化化合物や窒化化合物の排出は限りなく少なく抑えられるため、公害という観点からは非常に優れていますが、気候変動の観点からは優れているとは言えない、これが現実です。
次に、「日本の技術が非常に優れている」という点。正確には石炭発電に関連する分野についていえば、「優れていた」というのが現実です。現場のエンジニアの方々の話によれば、少なくとも最先端のUSCについては、カタログ値も実際の数値も熱効率等は中国の二段再熱USCにかなわないという状況になってしまっているとのことです。またIGCCやIGFCについても10年以上前から間もなく出来るといわれていたものがずれ込んでいる状況にあります。同様のことは二酸化炭素の貯留技術のCCSについても言えて、この10年の進捗は予想されていたスピードでは進んでいない。まさに、10年前には最先端だった日本の技術が今では後れを取ってしまっているという現実があります。
この点については、政府の将来に向けた的確な方針と適切な規制により、適切なマーケットが生まれ、民間のイノベーションが良い資金循環の中で進む、というエコシステムがエネルギー基本計画をめぐる政府の不作為により実現できなかったことに大きな問題があると思われます。今の利害調整に終始し、リスクを取って20年後の進むべき方向性を示すことが出来てこなかった実態を我々は直視せねばなりません。私自身も様々な場で問題提起しながら実現できなかった自分の非力を恥じるのみです。(つづく)
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(連載1)COP26と日本の石炭発電について
鈴木 馨祐 2021-11-27 00:13
(連載2)COP26と日本の石炭発電について
鈴木 馨祐 2021-11-28 18:46
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