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2021-10-01 08:05
(連載2)中国が体現しつつある’少数者による資本の私的独占’
倉西 雅子
政治学者
その理由は、習主席を含めた共産党上部こそ、改革開放後の中国にあって、民間企業を含めた大半の有力企業の個人大株主となっているからです。最近放映されたミャンマー情勢に関する番組でも、ミャンマー企業の大株主は軍部の上部であり、莫大な配当を受けている実態が暴かれていました。中国共産党も、まさしく同国の軍部と同様の立場にあります。仮に、習独裁体制の下で共産党の指導力が強化されるとしますと、その意味するところは、国営や公営化への回帰や上海や香港などの株式市場の閉鎖ではなく、民間株式、あるいは、民間資本のさらなる共産党幹部、あるいは、独裁者個人への集中を意味するかもしれません(因みに、北朝鮮の金一族も、キューバのカストロ一族も、世界有数の資産家です…)。
そして、目下、習主席は、「共同富裕」を唱えています。貧富の格差拡大が留まるところをしらない現状からしますと、共に豊かになろうと訴える同方針は、国民受けの良い政策かもしれません。しかしながら、その具体的手法が富裕層による寄付である点を考慮しますと、独裁的な地位にある同主席でさえ、自らを含めた共産党幹部が保有する’株式利権’に踏み込むことができないという、改革の限界を表しているように思えます。
既得権を共有してきた共産党員の離反を招くかもしれませんし、中国共産党と雖も必ずしも一枚岩ではありませんので、江沢民氏が率いる上海閥などから激しい抵抗や反発を受ける可能性もあるからです。このため、結局、所得移転の強化でもなく、’富裕税’の導入でもなく、アメリカといった自由主義国の富裕層も好んで用いている’寄付’といった’ソフトな方法’しか提案できなかったのでしょう。自らの個人的な資産を護るためにも…。
習近平思想は、’人民を中心とする発展思想を堅持する‘という方針にあるそうですが、その本質は独裁体制の強化にありますので、まさしく『1984年』で描かれているダブル・シンキングに他なりません。同思想に散見される’発展‘も、共産党一党独裁体制が続く限り、現実にあっては’衰退‘となるのでしょう。そして、習主席の目指す表向きの’脱資本主義‘とは、特権的な独裁者や少数者による資本の私的独占という資本主義の極致であるのかもしれないと思うのです。すなわち、社会・共産主義諸国が、これまで資本主義諸国に対して非難し続けてきた資本主義の欠点である少数者による資本の私的独占を体現した社会こそが、習近平思想の行き着く先となるのではないでしょうか。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)中国が体現しつつある’少数者による資本の私的独占’
倉西 雅子 2021-09-30 20:21
(連載2)中国が体現しつつある’少数者による資本の私的独占’
倉西 雅子 2021-10-01 08:05
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