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2021-09-07 09:19
宗教と中国
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
菅首相が退陣を表明し、後任がだれになるかいま日本中が興味津津たる状況だ。ぎりぎりまで決まらないとみる見方が多い。ひとまず、この話題を脇に置き、中国における宗教問題を取り上げて検討してみたい。イスラム教の問題が世間を騒がせているが、世界で信者が一番多いのはキリスト教徒である。世界の人口の3割以上は占めているとみられる。22億近い数字だ。今中国でのキリスト教徒人口はどのくらいかというと、米の学者の推計で、約1億1千万人、うちプロテスタントが1億、カトリックが1千万人と言われる。今でも中国は隠れたキリスト教国だが、遠くない将来、すなわち2030年ごろまでには、信者数は2億4、5千万人に達し、米を抜き、世界1位になると見られている。鄧小平が中国の開放改革路線を打ち出し、世界から資本や技術を取り入れたが、その際キリスト教特にプロテスタントの普及が大きかった。
近代以前の清朝末期の内乱の「太平天国」建国を目指した洪秀全は、キリスト教をもとにして中国伝統思想を融合させた「上帝教」を創始した。その後、中華民国を率いた、孫文、蒋介石はともに敬虔なるキリスト教徒でもあった。新中国になり、朝鮮戦争が勃発すると、中国での反米主義が強まり、キリスト教の宣教は文化侵略政策だ、宗教はアヘンだ。気をつけろ!ということになり、文化大革命時代、紅衛兵たちは、キリスト教はじめ各宗教の寺院や備品を打ち壊し、牧師、神父、僧侶たちをいじめまくった。中国の憲法では、一応「信仰の自由」を認めてはいるが、もちろん何事も共産党の支配下に置かれる。公式に五大宗教(道教、仏教、イスラム教、カトリック、プロテスタント)を認め、それぞれに愛国宗教団体を挟み、党の管理下に置いている。一党独裁政治の下では、宗教のような異議申し立ての起こりやすい団体は一種の脅威でもある。
近代の歴史で、キリスト教は欧米の世界進出にあたり強力な道具でもあった。共産主義も、経済も中国的特色を標榜する今の中国と欧米、特に米がこれからどうかかわって行くのか大いに注目されるところだ。これで面白いのは、教皇フランシスコだ。日本では教科書にも出てくるフランシスコ・ザビエルは、織田信長の時代、日本へ布教にやってきて、大名はじめ約20万人以上もの信者を獲得した。ザビエルはカトリックのイエズス会というグループに属するが、教皇フランシスコも歴代初めてイエズス会出身の教皇となった。台湾、香港のカトリック神父に取材したときの話では、教皇はザビエルを極めてあがめており、日本へのあこがれも強いそうで、ブエノスアイレス大司教に任じられた際、腹心の優秀な神父を3名ほど日本へ特別に送ったそうだ。ちなみに、今やどこの国も神父のなり手が少なくなり、神父はどこも多忙を極めており、日本は韓国の神父が多く来ているそうだ。ザビエルは、ひとまず日本での布教を成功させ、その後、本命の中国を目指し、今の広東省の沖合の島にに到着し、中国入りを待ったが、そのころの中国南部の気候は冷房のない時代極めて極悪な住環境で、体を壊しその地で亡くなった。
カトリックの中国での布教は古く、唐の時代に、すでにカトリックから分派した景教が入り込んでいた。そして支配階級と結びつき、歴代の皇帝のもと活動していた長い歴史がある。それが、今やライバルのプロテスタントに信者数で大幅に離され、焦った教皇は、中国と手を結ぼうと司教任命権を中国側に譲る形の譲歩までした協定を結んだようだ。
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