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2021-04-26 19:17
アメリカは信じられるのか
荒木 和博
拓殖大学教授
結論から言えば、アメリカは信じられないということです。これは、アメリカだから信じられないのではなくて、そもそも信じることができる国というものはないという前提に立たなくてはならないという話です。私は人間関係においても自分自身に対しても含めて信じるということは基本的にはしません。それは、人間というものは利益誘導や錯誤などで意思や行動が歪むことがあって、それは自分自身をも誤らせかねないからです。ですから、指導する大学生には「絶対に裏切らないのが親友ではない。裏切られても仕方がないと思えるのが親友だ」と言っています。つまり、例え期待したとおりに相手が動かなかったとしても、自分が揺るがないようにしておくことが信頼関係を健全にし、より大きなことを成し遂げる助けになるのです。
日本とアメリカの間には日米安全保障条約があり、日米同盟は堅固なものとされています。ですが、アメリカは日本を防衛する義務がある一方で日本には米を守る義務はありません。アメリカは血を流すのに日本は血を流さないということであれば、日本はその分どこかでアメリカに利益供与をしなければなりません。アメリカはこの戦後体制を利用して自国の都合が良いように日本に働きかけを行い、日本の国内行政や外交方針に深い影響を及ぼし続けています。これは、敗戦後の経緯があってのことですが、日本が主権国家である以上、戦後70年を過ぎて未だにそれが続いているのであれば、それは日本の国民の責任だと言えます。
北朝鮮問題というのは、アメリカにとってはワンオブゼムの問題でしかありません。目下中国との関係に神経をとがらせるアメリカにとっては、その一要素として朝鮮半島があるということでしかないのです。ですから、人権問題だからといってアメリカを信じていれば拉致問題を解決してくれるということなどありません。「これはあなた方にとっても悪いことじゃないんだよ」という説得を日本ができていないと、アメリカを動かすことなどできないのです。中国の協力を得られれば得たいところです。が、アメリカに対してと同様に中国にとっての何が良いのかを示せなければ意味がありませんし、お互いに「仮想敵国」ともなりかねない東アジア情勢にあっては、ますます協力を得るのは難しいでしょう。そうなると、やはり頼みの同盟国、アメリカを信じるしかないという話になってきそうですが、そういうことではないのです。
この国は信じられる、この国は信じられない。そういうので、協力を打診する相手を選ぶのではなく、必要な相手なら信用できない相手にも頼むのです。北朝鮮問題であれば、中国にこそ頼みたい場面もありますから、信じられるかという観点から判断するのはナイーブというものです。ですから、裏切られても大丈夫な体制を日本が構築しておけば良いのです。国際関係というのは自国の体制がしっかりしていないと目的を達することはできません。なんでもアメリカを信じるとかアメリカ頼みになるというのではなく、信じなくても成功の可能性を高められるようにしていきましょうということです。
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