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2007-07-12 15:26
連載投稿(2)東アジアの現実を見据え共生の秩序をつくれ
進藤榮一
筑波大学大学院名誉教授
いま中国は、情報革命下で拡大する格差社会のリスクを回避すべく、和諧(調和ある)社会を掲げる。そして孔子学院を世界に広め、市民主義化された儒教を、体制の支柱にすえ始めている。孫子や論語が、経営戦略テキストに組み込まれ、都市中間層文化の影に隠されたアジアの古層が、国境を超えて共通文化を育んでいる。神と個人主義を軸にした西欧的価値観とは異質な、茫洋たる東洋的価値観の広がりである。その価値観が、異質なものを異質なまま抱え込んで秩序をつくり上げる、アジア固有の文明と重なる。老子のいう「混成」と「両行」の教えである。
その教えが、「ムシャワラ(協議)」と「ムファカト(一致)」を重んずる東南アジア・アセアンの外交流儀に通底し、モンスーン地帯特有の稲作とコメ食文化の共通性と結び合って、アメリカや豪州の大規模機械農法のつくる文化との違いを際立たせている。グローバル化の中で噴出するBS(狂牛)病問題が、彼我の違いを明らかにする。覇権国家のつくるアグリ(農)グローバリズムの横暴が、ドルと核のつくる経済と軍事のアメリカン・グローバリズムと結び合う。その時改めて、それら三様の、農とドルと核のグローバリズムに抗して、アジアでもまた欧州統合の跡を追って、地域共同体をつくる動きが加速されてくる。
「日米豪印間の価値観外交ですって。非現実的ですネ。戦略性なき外交ですよ」――旅の行く先々で、近時政界で語られ始めた、中国「封じ込め」のための日本外交に、疑問と冷笑が投ぜられ続けたものだ。中国封じ込めではない。域内貿易比率が6割を超す東アジアで、共生の秩序をつくりあげていくことだ。情報革命が、アジア主義を復権させながら地域共同体を醸成する。それが東アジアの新しい現実だ。ソウルから北京までの旅が、その現実を指し示し続けていたのである。(おわり)
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投稿履歴
連載投稿(1)東アジア共同体への道―アジア主義の復権を見る―
進藤榮一 2007-07-11 13:55
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連載投稿(2)東アジアの現実を見据え共生の秩序をつくれ
進藤榮一 2007-07-12 15:26
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