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2020-10-14 09:49
(連載2)コロナ禍に対するトランプの反駁
斎藤 直樹
山梨県立大学名誉教授
しかも1月30日の時点で「海外渡航と貿易を不必要に妨害する措置を講ずる理由はない」とテドロスは勧告していた。しかしこのパンデミックはテドロスの言うところの「海外渡航」によって引き起こされたものでないであろうか。その後、世界各地で爆発的な激増を記録する感染者数の事由の一端はこのテドロスの誤った勧告によるところが大きいと言わざるを得ない。習近平がテドロスに圧力をかけたかどうかという問題は別にして、テドロスが習近平のご機嫌をうかがい続けたあまり、対応は明らかに後手、後手に回っていたことは確かであろう。テドロスのパンデミック宣言を受け、トランプは3月13日に「国家非常事態」を宣言した。この時点までに米国内の感染者数は1701人であり、死者数は40人に上った。また欧州の26ヵ国からの米国への入国制限をトランプ政権が発表した。この制限からイギリスやアイルランドは除外され、米国市民の帰国も許可された。入国制限は3月14日午前0時(米東部時間)に開始されることになったが、これにEUは猛反駁した。3月上旬まで新型コロナウイルスのパンデミックの中心地はヨーロッパに移った感がある。その後、米国内でも感染者数と死者数が爆発的に上昇するに伴い、米国内で初動対応が遅れたなど猛烈な批判にトランプは晒され続ける。とは言え、トランプによる「国家非常事態宣言」がWHOの「パンデミックとみなせる」との宣言を受けて発令されたものであることを踏まえると、何よりも初動対応が遅れたのはテドロスによるパンデミック宣言であったと言わざるをえない。
これに対し、トランプは3月19日のホワイトハウスでの記者会見で「われわれが新型コロナについて知っていれば、あるいは彼らが知っていれば、まさに発生源の中国で食い止められていたはずだ。しかし今となっては世界のほとんどが、この恐ろしいウイルスに苦しめられている。」すなわち、新型コロナウイルスの爆発的感染を世界に拡散した責任は中国にあるとトランプは明言したのである。トランプにとってみれば、自分の責任というより「春節」での膨大な数に上る中国人旅行者の海外渡航にこれといった制限をかさなかった習近平とその習近平に一々忖度するかのように、「緊急事態」宣言やパンデミック宣言をテドロスが遅延させた結果、米国へのウイルス感染者の流入という形でこうした災難に直面するとは全く想定外であったと言わざるを得ない。米国で感染者数が激増する中で批判の矢面に立たされたトランプはやり場のない怒りをWHOにぶつけた。4月7日にトランプはWHOに対する批判をツイッターに書き込んだ。トランプの書込みによると、「WHOは新型ウイルス対策を本当に台無しにした。米国が大部分の資金を提供しているのに、何らかの理由で今もウイルス対策はすごく中国中心である。我々は事態を注視することになるだろう。幸い私は早い段階で、中国からの入国を認め続けるよう要請したWHOの助言を拒否した。なぜWHOはこのような欠陥のある勧告を行ったのか。」それでも怒りの収まらないトランプは7日にホワイトハウスでの記者会見の席上、テドロスへの批判を繰り返した。テドロスが1月30日に「緊急事態」を宣言したとき、「海外渡航と貿易を不必要に妨害する措置を講ずる理由はない」と勧告した。しかし事態を重く見たトランプは翌31日に米市民でない渡航者の米国への入国を一時的に制限した。「そうすると、大したことはない、大きな問題はないとWHOは言った。何でもないと。最終的に私が渡航制限を行った際、私が間違いを犯したとWHOは言った。しかし渡航制限が正しいことが判明した」とトランプは反駁した。その上で、今後、WHOへの拠出金の支払いを再検討するとトランプは表明した。
これに対し、テドロスは8日に「我々はすべての国家と密接な関係にある。我々は肌の色で区別などしない」として感染問題を政治化しないでほしいとトランプに反駁した。これにさらなる憤りを感じたトランプは「WHOが新型コロナウイルスの感染拡大に対しひどく不適切な対応と隠蔽を行った」とWHOをまたしても厳しく非難し、その上で、新型コロナウイルスの大流行を招いたWHOの初動対応についての検証を待ち、WHOへの拠出金の支払いを停止するとトランプは指示したのである。またトランプは5月6日にホワイトハウスで記者団に本音とも言える言葉をと吐くした。トランプ曰く、「発生源で止めることができなかったのか。中国で止めることができなかったのか。発生源で止めることができたはずである。しかしそうはならなかった。」 この発言は発生源で食い止められることができたはずなのに、何故、このようなことになったのかという、やり場のない怒りをトランプがぶつけている発言と受け取れた。またこの発言はこうした事態を招いた全責任は習近平指導部にあり、同指導部の責任を厳しく追及する姿勢をにじませたものである。
5月14日には中国に対するあらゆる選択肢も行使しうるとの対決姿勢を露にした。米国はどのような報復手段を選択するかという質問に対し、「すべての関係を断ち切ることもできる」と中国との断交もあることをトランプは示唆し、「すべての関係を断ち切ると、5000億ドル(約54兆円)を節約することになる」とトランプは付け加えた。さらに9月22日の第75回国連総会一般討論演説において、中国の責任を追及する立場をトランプは明確にした。トランプは「第二次世界大戦の終結と国連の創設から75年が経ち、われわれは再び世界的な闘いに取り組んでいる。見えない敵である「中国ウイルス」との激しい闘いである」と切り出した。続いて、「われわれは世界にこの疫病をばらまいた国の責任を問わなければならない。中国である」とし、中国の責任を厳しく追及する方針であると断言したのである。(おわり)
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(連載1)コロナ禍に対するトランプの反駁
斎藤 直樹 2020-10-13 23:44
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斎藤 直樹 2020-10-14 09:49
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