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2020-05-13 23:53
(連載1)中国のマスク外交とドイツの相対的外交
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
今回の中国の武漢を震源地とするコロナウイルス(COVID-19)を、中国は4月初旬に「封じ込め」に成功したと宣言した。封じ込めが本当かは脇に置くとして、中国共産党政府は国内危機のために備蓄していたマスク(日本やほかの国の企業が製造したマスクを接収したものも含まれる)を、中国共産党政府の名前でイタリアなどに送っている。4月初旬の「封じ込め宣言」以降、接収したマスクを日本企業に返還・補償し原状に戻すべきであるが、中国は接収を続け、それを使ってマスク外交を展開し続けている。
日本の政治家も、日本の企業もそのことを全く指摘しない。マスコミは、そのような根本的な問題を無視して、日本政府が布マスクを配った事ばかりを問題にしている。中国が接収などをしなければ、本来日本政府が布マスクを配る必要などなかったのにも関わらず、それを指摘する人がいないことは極めて奇妙である。企業も、政治家も中国共産党に忖度しているのか。このような声は「ヨーロッパ」で上がっている。指摘に呼応する形でドイツの新聞やドイツのメルケル首相が中国にクレームをつけ始めたのである。
メルケル氏はベルリンで記者会見を開き、「中国が新型ウイルスの発生源に関する情報をもっと開示していたなら、世界中のすべての人々がそこから学ぶ上でより良い結果になっていたと思う」と述べ、流行初期の情報をもっと開示するよう中国に求めた。新型ウイルスに感染し療養中のボリス・ジョンソン英首相の職務を代行していたドミニク・ラーブ英外相は、「(新型ウイルスが)どのようにして発生し、なぜ早期に阻止できなかったのかという、厳しい質問をせざるを得ない」と述べた。(2020年4月21日、AFP通信)
要するに、中国がコロナウイルス禍の初期段階で情報を全く開示していなかったためにヨーロッパが甚大な被害を受けたとドイツもイギリスも主張している。いずれも民主主義の国であるために、基本的に政治のトップが言っているということはそのまま、国民の少なくとも過半数の意見であるといってよい。まあ、中国に対する責任追及の姿勢に濃淡はあるものの、多かれ少なかれ、中国に対して責任があるとみなしていることは間違いがない。この責任論を日本企業の資本で作ったマスクを使ったマスク外交でごまかされては困るのである。(つづく)
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宇田川 敬介 2020-05-13 23:53
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