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2020-03-26 12:47
(連載1)デマゴーグを排し日中の真相に目を凝らせ
加藤 隆則
汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
今回、日中の庶民が生活者としてのお互いを思いやり、それがSNSを通じた相互作用のなかで、良好な国民感情が生まれた。このことは、多くのメディアがすでに伝えたことなので繰り返さない。拙稿「渦中の中国社会と手肌感覚の日中友好」(3月12日付e-論壇「百家争鳴」)でもその一端を付け加えた。一方で、政治が関わる話は、特に感染をめぐる政治謀略論には、見て見ぬふりを決め込んできた。全く建設的でないし、所詮は大きな力を得ないだろうと思ってきた。ところが、とうとう目に余る事件が起きた。黙ってはいられない。
自民党の山田宏参院議員が3月3日の参院予算委で、新型コロナウイルスによる肺炎を「武漢肺炎」と決めつけた。その前日、オンライン授業で会話を交わした学生の中にも武漢在住者がいた。困難な状況の中で、笑顔を忘れずに過ごしている彼ら、彼女らを思い出し、憤りどころか、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。世界保健機関(WHO)の基準を持ち出すまでもない。政治家は票のためなら何を言っても許されるのだろうか。それが言論の自由だというのならば、それにともなう責任も同時に背負わなければならない。選挙を通過すれば、何をしても許されるのだろうか。それが民主主義だというのならば、政治家こそ民主主義を腐敗させる元凶だと自覚したほうがいい。生活者への想像力を欠いた、人情の理解できない政治家は、ぜひともすぐにご退場願いたい。両国の庶民が築いて生きた貴重な財産を、政治家のひと言が壊してしまったケースは過去に山ほどある。そして、その同じ政治家が、今度はこれ見よがしに、自分の成果だと言って中国の指導者と握手を交わすシーンも、いやというほど見てきた。もうそろそろ、国民自身が目を覚まし、様々なチャンネルを通じて政治に参画しなければならない。中国での感染拡大に一定のコントロールが効き始める一方、日本では対応に混乱がみられる。安倍首相が緊急対応を呼びかけても、国民の健康に対する配慮より、政治的な思惑が色濃く感じられる。本人そしてその側近は、その偽善的な発言に対する多くの国民の不信に気付いているだろうか。
さる3月5日、日本政府が春に予定されていた習近平国家主席の訪日延期を発表した。貴重な機会なので双方が慎重になるのは理解できる。機が熟するのを待ちたい。中国側は、先月末、楊潔篪党政治局員が訪日して以来、国内メディアに対して訪問時期の推測や新型コロナウイルス感染との関連については言及を禁じ、統一見解を徹底させてきた。相当な気の使いようからは、訪日を極めて重要視している姿勢が読み取れる。と同時に、山積する国内問題の解決に専念せざるを得ない状況なのだ。何よりも延期されている全国人民代表大会を成功させなければ、外交どころではない。そのさなかに、「武漢肺炎」を執拗に公言し、隣国を追い詰めるような発言の真意はどこにあるのか。その政治家の国際感覚は田舎議員のレベルだし、かといって庶民感情からも程遠い。いったいどのような意図があって発言をしているのか、頭を冷やして考えたほうがいい。安倍首相以下、自民党全体の問題である。
言うまでもなく、感染症は国境を越えた共通のリスクである。各国が手を携え、解決しなければならない、というのが世界の常識だ。ある国、地域をつるし上げ、それで解決するわけではない。色眼鏡をかけ、奇異な目で他人事の騒動を見ているから、そこから教訓を取り入れ、切実に学ぼうとする姿勢を欠くことになる。そのツケが今、国民生活のうえに降りかかっているのである。中国の徹底した健康管理は言うまでもないだろう。当時、都市部では、外出も家族で1日か2日に1回、しかも3時間だけと限られているエリアも少なくなかった。外出時には警備員から時間を記入したチケットを渡され、それを持たなければ再帰宅はできない徹底ぶりだった。その後、だいぶ緩和されたようだが、地域によってはなお、「在宅」が常態化している。(つづく)
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