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2020-02-25 18:15
(連載1)ロシア帝国終期に似た中国の受難
岡本 裕明
海外事業経営者
日露戦争でのことです。ロジェストヴェンスキー率いるロシアバルチック艦隊は遠路はるばる極東に向かいますが、日英同盟のために英国海軍は先回りしてバルチック艦隊の補給路をひたすら邪魔します。ロシアと近い関係だったドイツがサポートしたことで、アフリカで給油をかろうじてできましたが、多難な航海によって乗務員の士気は落ち、その後の連合艦隊との戦いでの敗北への遠因となります。
今、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号がその停泊地を求めてさまよう姿を見ているとこのロシアバルチック艦隊の迷走ぶりがすっと頭に浮かんできてしまいます。バルチック艦隊は本質的に強かったのか、という疑問に立ち返ると、ロシアの時の皇帝、ニコライ二世の独裁覇権主義に問題点がありました。ニコライ二世はロジェストヴェンスキーという優秀かもしれないけれど実務経験がない男にその運命を託す間違いを犯し、その専制体制の下で修正はなされなかったのです。
中国がこの20年で急速に力をつけたのはご承知のとおりでありますが、その力とは外国からの技術の導入と安価な輸出産品、そして13億人の人口を背景とした購買力です。これらがもたらす経済的な恩恵を前に多くの国は「言うなり」になってきました。しかし、その統治の裏では、一部の野心的な政治家が共産党という枠組みの中で激しい鍔迫り合いを行うという建国以来の権力闘争があります。このような世界での覇権を進め国内では政争を繰り返す中国のスタイルは、ロシア帝国が日露戦争敗戦後にロシア革命で倒れたこととどうしてもイメージが重なってしまうのであります。
今回の新型肺炎の対策には習近平国家主席の影は薄く、李克強首相の指導力が目立っていると報じられています。この「報じられている」というのが事実関係よりも意味ある点であります。国民意識が習近平体制の弱体化を如実に表しているともいえるのです。政府の代弁者である中国のメディアは誰の味方をすべきか、当然先読みをしているはずです。習近平国家主席においてはこのところの失策はあまりにも大きかったと思います。(つづく)
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(連載1)ロシア帝国終期に似た中国の受難
岡本 裕明 2020-02-25 18:15
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