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2007-06-10 20:00
連載投稿(2)アジア統合とアメリカ
山下英次
大阪市立大学大学院教授
アジア統合もしくは東アジア共同体建設について、まずはじめにアメリカに言うべきことは、われわれアジアがEUやNAFTAに入れないのと同様に、アメリカはアジア建設の中心的な枠組みには決して入れないということである。東アジア・サミット(16カ国)という形骸化した枠組みには、アメリカが希望すれば――具体的には東南アジア友好協力条約(TAC)をASEANと締結すれば――、入れてもらえるかもしれない。しかし、アジア統合の主たる推進母体である「ASEAN+3」に、米国が入ることは、アジア諸国は決して許さないであろう。
第2に、そしてこれが最も重要なことだと私は考えるのであるが、アジア統合は、もはや”whether” (「進むかどうか」)の問題ではなく、”how”(「どのように進めるべきか」) の問題である。すなわち、アメリカが好むと好まないにかかわらず――おそらく好まないであろうが――、アジア統合は必ず進展する。
マハティールのEAEG構想(1990年12月)の頃は、日本だけがアジアの中で経済的に突出して発展していたため、日本抜きの枠組みでは意味がなかった。EAEG構想は、多くの日本人にとって、非常に良い話だと思われたが、米国が露骨に日本に対して外交的な圧力をかけてきたため、日本政府は参加を表明できなかった。そのため、EAEG構想は、一旦は頓挫した。
しかし、昨今、日本だけがアジアの中で突出して経済の発展段階が高いというわけではない。たとえ、日本抜きでも、アジア統合はそれなりに進展していくことであろう。日本が入らないとすれば、それは結局のところ、中国を中心にアジア統合が進むということを意味する。すなわち、アジア統合についていえば、アメリカにとっての現実的な選択は、中国1カ国だけが主導するアジア統合が良いか、それとも日本と中国の2カ国が主導するアジア統合が良いか、ということである。
冷静に考えれば、アメリカにとって好ましい選択は、当然、後者ということになろう。米国にとっての本音は、アジアをどこか1国が支配することだけは絶対に認めたくないということであろう。ただし、その1カ国がアメリカである場合は別であるが・・・。アメリカは、かなり嫉妬深い国なので、政権が変われば、日本に対して、アジア統合への参加を牽制したい誘惑にかられるかもしれない。しかし、以上のように考えると、それはアメリカにとっても得策ではないのである。(おわり)
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連載投稿(1)アジア統合とアメリカ
山下英次 2007-05-25 12:02
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連載投稿(2)アジア統合とアメリカ
山下英次 2007-06-10 20:00
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