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2019-05-13 12:38
バチカン外交から見た中国問題
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
来日中の台湾外交に長らく携わっていた人物と懇談の機会があったところ、同氏の述べたバチカン外交から見た中国問題について、ご参考までに紹介する。同氏は、敬虔なるカトリック教徒である。
同氏は「久しぶりの日本だが、日本のマスコミが米中貿易問題に大きなスペースを割いているのが興味深い。日本の方々は、相変わらず国際問題ではおっとりしている。悪く言えばナイーブであることは変わらない」、「中国の巧妙な働きかけは、色々垣間見られる。近く退任し帰国する中国大使夫妻に異例にも、天皇皇后がお会いになっているし、経済界は相変わらず、米中対立は経済の見通しを暗くする。経済戦争に片方のみの勝利はない。中国が不公正なやり方をしたからと言ってこちらが国際ルールを破るやり方はいけないなど、話し合い支持のオンパレードだ。ある日の新聞には、一面に某日本の自動車メーカーが、22兆円以上の売り上げがあった。これは、日本、北米の落ち込みにもかかわらず中国での売り上げがあったからだなど、対中協調の流れもみられる。確かに、米のトランプ大統領は、経済のディール手法の経験から、中国へ脅しをかけて決着に持ち込みたいのかもしれない。老練な中国が、おいそれと頭を下げる見通しは薄そうだ。中国国内の状況からも、『引き分け』に持ち込みたいところだろう。トランプ大統領は外交は苦手のようだし、次の米大統領選挙をにらみ妥協に傾く可能性もあり得ると、今全力を傾けて、大統領の身内や米のあらゆる部門、民主党方面も含め工作を重ねているところだと思われる」と述べていた。
また同氏は「中国と下手に妥協すると痛い目にあうとの例として、最近のバチカンの対中外交について述べる。昨年9月、バチカンは特例として、カトリック教会の幹部である司教の任命について暫定合意の文書に署名した。内容は秘密にされているが、中国側が選定した司教をバチカンが認めるということは大変な譲歩だ。バチカンは、幹部会議たる世界司教会議に2名の中国人司教を招いたりした。しかるに、イスラム教抑圧を行っているようにカトリック教徒への弾圧は続けている。各地での教会の破壊、十字架、マリア像の破壊を行っている。地下教会の神父やシスターの逮捕も続けている。聖書の取得も最近は非常に厳しくなっている」と述べた。
最後に同氏は「中国共産党の現場レベルでの実態をよく知る我々や香港の関係者が、バチカンへ色々忠告しても、彼らはあまり聞く耳を持たない。ある司祭は、彼らから『我々は長い間中国で、様々な失望や苦しみに耐えてきた。ここはもう少し忍耐強く耐えて、中国の未来を希望で満たそうではないか』と言われたと嘆いていた」と述べた。
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